第16話「ライバルの告白」

放課後、葵が珍しく一人で帰ると言い出した。

 嫌な予感がして、少し離れて後をつける。


 駅前のベンチで、佐伯と葵が向かい合って座っていた。


「——好きなんだ、葵ちゃん。付き合ってほしい」


 聞こえた瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。


(……やっぱり、佐伯……!)


 葵はしばらく黙ったまま、視線を落としていた。

 やがて、小さな声で答える。


「……ごめんなさい。私、好きな人がいます」


 その言葉に、心臓が跳ねる。


「そっか……天城、か?」


 葵が驚いて顔を上げる。


「やっぱりな。お前ら、雰囲気で分かるよ。……でも諦めないから」


 そう言い残して立ち去る佐伯。

 ベンチに残された葵は深いため息をついた。


 そのとき、背後から声をかけた。


「……つけてて悪かった」


「お兄ちゃん……」


 葵が驚いた顔をして立ち上がる。

 俺は一歩近づいて、その手を握った。


「もう隠す必要ないだろ。俺たち、ちゃんと付き合ってるんだから」


「……はい」


 葵が少し泣きそうな顔で笑った。

 駅前の雑踏の中で、二人だけの世界が広がっていた。

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