第11話「告白できない」

文化祭が終わった翌日。

 まだ疲れが残る体で登校すると、クラスは昨日の話題でもちきりだった。


「天城、昨日ヒーローだったな! 妹ちゃん抱きとめるとかドラマかよ!」


 周囲の冷やかしに、顔が熱くなる。

 横を見ると、葵も真っ赤になって下を向いていた。


 放課後。

 帰り道で、葵が小さな声でつぶやいた。


「あの……昨日のこと、本当にありがとうございました」


「だから、普通だって」


「……私、お兄ちゃんに言いたいことがあるんです」


 立ち止まる葵。心臓がドクンと鳴る。


「言いたいこと?」


「えっと……」


 そのとき、後ろから声がかかった。


「おーい、葵ちゃん!」


 振り向くと、佐伯が手を振って近づいてくる。


「文化祭のお疲れ会やるんだけど、来ない?」


「え……あ、はい」


 思わず答えた葵に、胸の奥がざわついた。


「じゃあ放課後、駅前でな!」


 佐伯が去ったあと、葵は困った顔をした。


「……ごめんなさい、お兄ちゃん。続きは、また今度で」


 そう言って小さく笑い、走り去る葵の背中を見送る。


(……なんだよこれ。モヤモヤする)


 帰り道、ひとりでつぶやく。


「俺……本当に、葵が他のやつと一緒にいるの嫌なんだ」


 認めたくない感情が、もう抑えきれなくなっていた。

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