第9話「妹、兄の変化に気づく」

最近、お兄ちゃんが少しおかしい。

 前よりも、私のことをよく見ている気がする。


 今日だって、佐伯くんと話しているとき——

 ちらっと視線を感じたから見たら、お兄ちゃんがこっちを見ていて、すぐに目をそらした。


(……怒ってた? やきもち?)


 考えれば考えるほど、胸があたたかくなる。

 お兄ちゃんが、私のことを気にしてくれるのが、なんだか嬉しい。


 帰り道も、あの人らしくないくらい不機嫌だった。

 でもそれも——ちょっとだけ、うれしい。


 夜、部屋でスマホを見ていると、ドアの向こうで気配がした。


「……お兄ちゃん?」


 返事はない。

 でも、足音が少し遠ざかるのが聞こえた。


(もしかして、心配してくれてたのかな)


 胸に手を当てると、心臓がどきどきとうるさい。


(好き、かもしれない……)


 そう認めた瞬間、顔が熱くなって枕にうずまった。

 もう、明日お兄ちゃんに会うのが少し楽しみで仕方ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る