第7話「文化祭準備とざわつく心」

文化祭まであと二週間。

 放課後の教室は、どのクラスも慌ただしく準備が始まっていた。


「天城、悪い。お前妹と同じ班だろ? 材料運び手伝ってやれよ」


 クラスメイトに言われ、仕方なく体育館倉庫へ。

 そこには葵と、例の男子——佐伯が一緒に段ボールを運んでいた。


「助かる、天城。重いやつ残っててさ」


「……俺がやる」


 無言で箱をひょいと持ち上げると、佐伯が苦笑いをした。


「力持ちだな。じゃあ残り頼んだ」


 佐伯が教室に戻ると、葵が小さく息を吐いた。


「……佐伯くん、優しいですね」


「ふーん」


「お兄ちゃん、怒ってます?」


「別に」


 口ではそう言いながら、妙に胸がざわついていた。


 作業を終えて帰り道、葵が少し嬉しそうに言う。


「クラスの子と仲良くなれました。佐伯くんも色々教えてくれるし」


「……そうか」


 うまく笑えなかった。

 自分でも驚くほど心が落ち着かない。


(なんだよこれ……)


 その夜、机に向かっても勉強が手につかない。

 頭の中では、葵と佐伯が楽しそうに話している光景ばかりが浮かんでくる。


(……何で俺、こんなに気になるんだ)


 胸が重たい。

 けれどその理由を、まだ口にすることはできなかった。

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