第6話「妹、誘われる」
翌週の放課後。
部活が休みだった俺は、昇降口で葵を待っていた。
すると、昨日見かけた男子が葵に話しかけているのが目に入る。
「今度の文化祭、クラスでお化け屋敷やるんだ。手伝いに来ない?」
葵は一瞬俺の方を見たあと、困ったように笑った。
「えっと……兄と帰るので……」
「じゃあ、兄貴も一緒に来ればいいじゃん」
冗談めかして笑う男子。
俺はなぜか胸の奥がざわついて、思わず口を挟んだ。
「悪い、今日は用事あるから。また今度な」
そう言って葵の腕を軽く引いた。
男子は少し驚いた顔をしたが、何も言わずに手を振った。
家に帰る途中、葵が小さく口を開く。
「……あの人、悪い人じゃないと思います」
「そうだな。でも、知らないやつについてくのは危ねえよ」
「お兄ちゃん、怒ってます?」
「別に。ただ……心配なだけだ」
その一言に、葵が少し驚いたように目を見開く。
やがてふわっと笑った。
「じゃあ、ちゃんとお兄ちゃんのそばにいますね」
その笑顔が、さっきの男子の顔を一瞬で吹き飛ばした。
けれど胸の奥は、まだ妙にざわついていた。
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