第5話「妹、気づいてしまう」
お兄ちゃんの部屋から、足音が遠ざかる。
さっきまで冷たいタオルを替えてくれていた手の感触が、まだ額に残っている気がした。
(……ドキドキする)
おかしい。
熱のせいじゃない。
ただの兄なのに、こんなに胸が高鳴るなんて。
同居が始まったときは、正直ちょっと怖かった。
いきなりお兄ちゃんができるなんて、どう接すればいいのかわからなかった。
でも——学校に送ってくれた日、
クラスのみんなに紹介してくれた日、
そして今日、私のために動いてくれた日。
(ああ、私、この人のこと……)
意識した瞬間、顔が熱くなる。
たぶん熱のせいじゃない。
夕方、目を覚ますと、部屋の隅でお兄ちゃんが居眠りしていた。
机の上には冷めかけたおかゆと、水の入ったコップ。
「……優しいなあ」
小さくつぶやくと、胸がじんわりあたたかくなった。
(本当の妹じゃなかったら、きっと——)
言葉の続きを想像して、思わず枕に顔をうずめる。
心臓が苦しいくらいドキドキして、もう眠れそうになかった。
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