第4話「妹、熱を出す」

翌日、葵は朝から少し顔色が悪かった。

 それでも「大丈夫です」と言って学校に行ったが、昼休みに保健室から電話がかかってきた。


「天城、妹さん熱出したって。迎えに行ってやれよ」


 クラスメイトに冷やかされつつ、俺は保健室へ向かった。


「……すみません」


 ベッドの上で弱々しく笑う葵。

 普段は明るい彼女がぐったりしている姿に、胸がざわつく。


「謝るな。とりあえず帰るぞ」


 荷物を持って、葵の肩を支えて歩く。

 家に着くと、母さんと父さんはまだ仕事中。結局、看病役は俺一人だ。


「熱は? 計ったか?」


「……三十八度です」


「寝ろ。水持ってくる」


 タオルを絞って額に置くと、葵が目を細める。


「優しいですね、お兄ちゃん……」


「こんなの普通だろ」


「でも、ちょっとだけ嬉しいです」


 小さな声に、心臓が跳ねた。

 そのまましばらく黙って彼女を見ていると、ふと葵が口を開く。


「……お兄ちゃん、もし私が本当の妹じゃなかったら、どうします?」


「は?」


「なんでもないです。熱のせいで変なこと言いました」


 そう言って目を閉じる葵。

 けれど俺の胸の奥では、その言葉がずっと響いていた。

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