【続々おまけ】 また寝取られてぇか!

 俺は驚きを隠せなかった。

 衝撃的な光景を目の当たりにし、頭痛がしたからだ。

 どうして……いや、そうなるのか。


 燐の家から、ちょうど溝口が現れた。


 ――そうか、この男……燐の部屋に隠れていたのか。なんて野郎だよ。



「…………っ!」



 気まずそうにする溝口は、誤魔化すようにして家の中へ戻ろうとする――が、扉が閉まるギリギリのところで小雨さんが足を突っ込んでいた。……お、マジか。



「まちなよ、先輩さん!」

「……な、なんだよ、あんたたち!」

「あなたこそ、なぜ保志野さんの家にいるんですか! おかしいでしょ」

「つ、付き合っているんだから当然だろ!」


 ……そうか、そういう関係になっているのか。だから、燐はこの男を匿っていたのか。失望を通り越して“無”しかない。もうなんの感情も湧かなかった。

 だけど、罪は償ってもらう。



 今度は、安曇さんが“トラブル”のことを追求。

 だが、溝口はとぼけていた。


 自分は知らんと。


 なんて野郎だ!

 知らぬ存ぜぬとは……!



「さすがにそれはないだろ」



 と、俺が注意すると溝口は怪訝けげんな表情を浮かべた。特に俺とは気まずい関係だ。それは向こうも承知のようで、明らかに不快そうにしていた。まて、それは俺のする表情だ。なぜ、お前が被害者みたいなツラしてんだ。殴りてえ。



「……黙れよ、相楽」

「え」


「てめーと燐の関係は知っているさ。でもな、もうお前は終わったんだよ! 燐は処女で、締まりがよくて最高だったぜ!!」



「…………ッッ」



 トラウマが蘇る。

 あの数週間前に教室で起きたことが走馬灯のように流れていく。


 コイツは……この男は! 悪魔か!


 俺を何度苦しめたら気が済むんだ。

 ようやく忘れかけていたのに。……許せねえ!



「相楽、お前みたいな雑魚は引っ込んでろ!」

「そうは……いかない」


「あぁ!? また寝取られてぇか! そこのギャルなんか可愛いよな!」



 溝口が調子に乗って叫んでいた――その瞬間だった。



 グーが溝口の顔面にメリ込んでいた。




「…………ガ、ハッ」



 小雨さんがブチギレていた。――って、えぇッ!?


 まあ今のは溝口が失礼すぎたというか、言ってはならんことを言ってしまったな。


 更に、安曇さんのビンタが溝口の頬を何度も往復。



「ぶべ、ばびっ!? ぶふぁ、あぁあっ!!」



 俺が出る幕もなく、小雨さんと安曇さんの猛攻が続いた。ついには溝口はノックダウン。ボロボロの物体になり果てていた。


 そして、直後には燐が帰ってきた。



「え……なにやってるの?」



 この光景に驚く燐。そりゃ、そうか。



「保志野さん、ごめんなさい。溝口先輩に用があってね」



 と、小雨さんが状況を説明するものの、燐は青ざめていた。



「溝口先輩って……え、なんでここにいるの!?」



 ――は?


 って、まさか!


 溝口のヤツ、不法侵入か……!?



「り、燐。待っていたよ、君の部屋で!」

「は……はあ!? 溝口先輩、勝手にわたしの部屋に入ったんですか!?」


「仕方ないだろう。逃げ場がなかったんだから……」

「いや……さすがに困ります! 家の前まではいいですけど、部屋に無断で侵入するなんて……最低ですよ!」



 燐ですら引いてるじゃないか。

 どうなってんだよ、コレ!


 もうなにがなんだか分からない。でも、溝口が悪人だってことは分かった。


 こうなったら警察に突き出すしかない。

 俺は直ぐにスマホを取り出し、通報した。



【おまけ改へ続く】

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