【続おまけ】 幼馴染を寝取った男を探せ

 廊下へ向かい、そこで安曇さんと話すことに。

 制限時間は三分ってところか。それ以上は、俺の命が危うい。名探偵もお手上げの未解決事件にされるだろう。


「それで、話って?」

「……うん、実は……溝口先輩のことなんだけど」


 そう切り出され、俺は一瞬時が止まった。

 え、溝口……だって。

 あの溝口だよな。

 俺の幼馴染を寝取ったあの男のことか……。


「そ、その人がどうしたの?」

「わたしの友達が被害にあってね」

「なんだって……」

「妊娠しちゃったみたい」



 ……こんな身近に溝口の被害者がいたとは。そうか、それで妙な感じがしたんだ。安曇さんは、最初からこのことを相談したかったわけか。

 でも、なんで俺に?

 というか、俺と燐のことをなぜ知っているんだ。


「俺にどうして欲しいんだ?」

「もちろん捕まえるの。協力してほしい」

「マジか」


 噂によれば逃げ回っているようだし、どこにいるのか先生たちでも分からんようだ。そんな相手を探すだなんて……難しいように思える。


「居場所はなんとなくわかってるから」

「そうなのか? 情報を持っているのか」

「実は、保志野さんから聞いたの」

「え、燐から……? 友達なのか?」

「違うよ。その被害者の子が友達だったみたい」


 そういうことか。安曇さんの友達とやらが燐と繋がりがあって――そうなると、溝口もその子をターゲットにするわけだ。つか、燐のヤツ……友達を売ったってことか?

 いや、まさかな。そこまでするような人間ではないはずだ。


「わかった。放課後、溝口を探そう」

「ありがとう。なんとかして警察に突き出したいから」

「そうだな。これ以上、被害者を出すわけにはいかない」


 できれば関わりたくはなかったが、しかし、事情を聞いてしまっては見て見ぬふりはできない。

 それに、幼馴染を寝取られたトラウマを完全に克服する為にも……立ち向かわなければならないと思い始めていた。

 たぶん、溝口をなんとかしないと俺の気持ちは晴れない。


 心の奥底では、ずっとモヤモヤが続いていた。

 やはり、そうなると向き合うしかないよな。


 俺にヤツを止められるか分からないが、困っている女子は放っておけない。



「じゃあ、また放課後に」

「わかった。一応、連絡先だけ交換しておく?」

「そうだね。よろしく、相楽くん」



 ラインを念のため交換した。

 増えることのない一覧にまた女子が加わった。最近の俺、どうした。



 ◆



 隣の席の小雨さんに、手紙を投げつつ事情を打ち明けた。

 安曇さんは、溝口のことだけなら話していいと言っていた。ので、俺は遠慮なくノートの切れ端に書いた。


 小雨さん、最初こそ病んではいたけれど、安曇さんの友達が大変であること。溝口の居場所が分かったかもしれないことを共有すると、小雨さんから『ぶちのめしましょ』と返答があった。

 こうなったら戦うしかない。

 ヤツを止める為にも。



 放課後になり、校門前で集合となった。

 すでに安曇さんは待機していた。



「相楽くん、そして小雨さん。溝口先輩の居場所が判明したから、ついてきて」



 どうやら確定情報のようだ。

 その場所とは――。



【続く】

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