第3話 お父様とお母様
お父様とお母様のお顔を見てホッとした私。
「おかえり、大変だったな。話は聞いた。」
「エリッサちゃん、大丈夫?じゃないわね。泣いた跡があるじゃない」
「とにかく、屋敷に入ろう。温かい物でも飲んで、まずはゆっくり休みなさい。辛いだろうが、事は重大だ。私たちの可愛い一人娘に、なんて事をしてくれたんだ、あいつは」
吐き捨てるように怒りを露わにする父に、これっぽっちも残念に思ってない私は、こっそり心の中で詫びたわ。
「そうよ、そうよ、私たちの可愛い娘をある意味傷物にしたわ。エリッサちゃんは本当に頑張っていたものね。多少は愛想がないかもしれないけれど、頑張ってたじゃない。」
愛想がない、ちょっとグザッと、来るわね。
「そして私の可愛い娘、言うけどこの国では1、2を争う美人よ。3日で慣れるってものでしょ。けど、誰かさんは7年経ってもその良さをちーっとも分かってなかったんだわ。ついこの間までは「エリッサは僕にはもったいない、天使だ。ボクはエリッサだけに愛を囁いていくからね」って言ってたくせに許せないわ」
おかしいわね。
マーティン様のあのセリフ。
「エリッサは僕にはもったいない、天使だ。ボクはエリッサだけに愛を囁いていくからね」って言われた時は確か、「愛は盲目に、恋は片目を開けて」っていうドロドロの愛劇を無になって観劇した帰り道で言われたわね。あの時の、そのままのセリフをなぜお母様がご存じなのかしら?
謎だわ。知らないけど。
「とにかく、屋敷に入ろう。私は明日朝一番にクランク公爵に謝罪と慰謝料の請求と、我が領との取引を辞めさせていただくと伝えてくるぞ」
娘可愛さで、取引まで辞めてしまいますの?クランク公爵様、大丈夫でしょうか?
まあ、もう私が関わることはありませんから、お父様に任せましょう。
「エリッサちゃん、泣くならこの母の胸を貸しますわよ。」
大丈夫です、お母様。お母様のお胸を借りてしまうと私は窒息死をしてしまいますわ。だから辞めておきましょう。
決して、羨ましいなんて思ってないわ。
私は私の二つのお山、違うわね、丘もどきをちらっと見てため息をもらしたの。
「ため息をつくほど、がっかりしたのね」
はい、私のお胸の今後の成長具合にため息をついてしまいましたわ。
私がお母様のようになるのはいつの事でしょうか?
屋敷に戻った私たち。
それからお父様は「お前の結婚式に開けようと思っていた酒を開けてやる」って大層豪華な箱に入って、中身は金粉?と思うものがキラキラしていた薄く白濁のお酒を美味しそうに飲んでるわ。
私も飲みたい、けど、私はまだ未成年。
あとでこっそり飲んでみましょう。
お父様「今日はこの酒を飲み干すぞ」なんて言う割にはチビチビ飲んでいるわね。
きっとすごく美味しいのでしょうね。
ケチくさい、って言葉は頭の片隅に置いとくわね。
お母様、お父様が隠していたチョコレート、どこから出してきたのかしら?
私も食べましょう。はー、美味しいわ。
まるで疲れが取れるようだわ。
今日はきっと興奮して寝れないと思うの。
明日から、本腰入れて、領地改革に力を入れていかなきゃいけないものね。
だって、もう、私は1人で生きていく事になるんだから。結婚間近の貴族令嬢が公に婚約破棄されたのだから、もう、私と結婚しようなんて人いないでしょうから。
いずれはお父様の親戚の中から優秀な子を引き取って育てるのも、考えなきゃね。
明日は何をしようかしら?
学園では、今日のことはもう噂になっているのでしょうね。
でも、平気。私は何も悪いことをしてないのだから。
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