第2話 マーティン様とのお茶会
婚約してから2年が過ぎた頃かしら?
またいつものようにマーティン様からの
「ボクの婚約者に愛を込めて」のメッセージかと思ってましたの。
その時は「ボクの愛する婚約者へ」と、言葉が変わり、字も違っていたわ。
その時、私は気づいてしまったの。
「ボクの婚約者に愛を込めて」と書いた文字と、「ボクの愛する婚約者へ」と書いた文字、明らかに字が違うもの。
これは誰かが書いたのだわ。
どっちがマーティン様の字かしらね。
とにかく字が違うわ、書かせたのね。
誰に書かせたのかしら?
婚約者に宛てたメッセージを誰かに書かせるなんて!クズ、じゃなくて?
ある時なんて
「ね、ボクが好き?」
って聞いてくるのも困ったわね。
だってこれは政略的な婚約だもの。
だから答えたわ。
「ひ、み、つ」
そうしたらマーティン様が照れてこう言ったわね。
「やっぱりエリッサはボクのことが好きなんだね。照れて言えないから「ひ、み、つ」なんて言うんだね。可愛いね」
照れてもないし、好きかどうかだなんて答えるの、面倒だったもの。
(どう受け止めてもいいから)
「好きにして」って言ったら、急に抱きついてきたから押し戻してやったわ。
それに、少し前のランチでニンニク食べたわね?マーティン様の息がニンニク臭で耐えられなかったからその場を急いで後にしたの。
そうしたら、次に来た「ボクの愛する婚約者へ」と書いたメッセージの下に、「恥ずかしがり屋のエリッサも可愛いね、次は逃げないでね」って書いてあって、寒気がしたのは秘密。
この事で、「ボクの愛する婚約者へ」って書かれたこのメッセージの方がマーティン様なんだってわかったのよ。
だけど「次は逃げないでね」ってなに?
怖いんですけど。だから、お父様に頼んで護身術を習うことにしたわ、正解!
なぜって?
その次の2人のお茶会には何故か隣同士の席に勧められたの。今までは向かい合わせだったのに。
私があなたの隣に座るのって?
なぜ?
「エリッサ、可愛いね。照れてないで僕の隣においでよ。何もしないさ。」
何かする気ですね、ご遠慮します。
全力で!
「いいえ、マーティン様の隣だなんて。」
嫌すぎる。
「照れてるね、ほら」って私に手を伸ばしてきたから関節技を決めやりましたわよ。
けど、一瞬で外しましたよ。
だって一応わたくしの婚約者ですもの。
マーティン様、何が起きたのか分からないって顔をしてましたわね。ちょっとマヌケで笑えました。
あと気をつけないと。わたくしのお父様よりマーティン様のお父様の方が爵位が上ですもの。
だからね、暴力は、違いますね、防御はほどほどにってところかしら。
そんな事を考えていたら、私の家に着いちゃいました。さっきは泣いてしまいました。実は嬉しくって。
さぁ、マーティン様から婚約破棄されたと話したら、お父様はなんて言うかしら?
お母様はどんな反応をするかしら、ねぇ。
まあ、でも、何かを察してはいるんでしょうね。だってマーティン様は私をこの屋敷に迎えにも来ない、ドレスや装飾品やガラスの靴などの贈り物も今回は無かったもの。
普通、パーティーなら男性が女性にドレスや装飾品を贈るわ。特に男性の独占欲を表しているのかしら、男性の瞳の色を意識した装いをするものよねー、普通は。
エスコートもよ、婚約者を男性が迎えに来るものでしょう?
今まではちゃんとしていたわ。けど、今回は何も無かったの。
良かった。大切だから2度言うわ。
(マーティン様の色に染まらなくて)
良かった。
さ、門をくぐって来たわ、もうすぐ玄関ね。あら?あれはお父様、それにお母様までいるじゃない。
「お嬢様、旦那様と、奥様には私から早馬を出させてもらいました。勝手な真似をしてすみません。お嬢様が泣いていらしたから心配で。」
申し訳なさそうにしている御者。
「いいえ、謝る必要はないわ。」
馬車が玄関に到着すると御者が馬車のドアを開けてくれた。
私はゆっくりと降りる。いつもより優雅に、いつもより笑顔で。
「お父様、お母様、ただいま帰りました」
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