第3話 『勇者』の旅路#1

数カ月後。


地獄のシゴキを王宮で受けて、なんとか最低限、『勇者』としてできる程度まで成長した。


そして今、ボクは相乗りさせてもらって、馬車に乗って旅をしていた。


「勇者様、私の馬車に乗ってよろしかったんで??」


「いいよ。ボクは平民だから。本当なら歩かなきゃいけないんだ。」


「そうですか。どこまで行くのですか??」




どこまで??ボクの答え決まっているよ。




「相乗りで行けるところまで。」




「それですと……………『ウルザ』ですかね??」


『ウルザ』。


そこはとても大きい都市。

それだけ発展しており、それだけ闇の部分も存在している都市。


当然、『魔王』の手は届かない。物理的に。距離が遠いから。




「うん、そこまでお願い。」


「了解です。」





その馬車はとても楽しかった。行者が話しかけてくれたからだ。




でも、そんな時間はすぐに終わった。





「勇者様ぁ!!魔物でさぁ!!レッドウルフです!!」



魔物。



それは、『魔王』が作り出したとされている存在。当然のように、魔物もピラミッド状に実力はなっているが、如何せん数が多いので、『冒険者』という存在が戦い、報酬を受け取り、それを求め、また戦う。そうやってうまいこと回しているらしい。




「任せて、すぐ対処する。」


『グルルル』


今回はウルフ系統らしい。

しかも3体。

珍しい。

レッドウルフが群れることは少ないのに。

一体だとB級下位。群れるとA級下位クラスにまで跳ね上がる。なぜなら、指揮を行い、文字通りの『』をするからである。


少し面倒だが、ボクは問題ない。なぜなら………………



「勇者様…………」


勇者世界最強の才能だから。


「……………灼き尽くせ、『聖灼剣ホーリーブレード』」


白いような、輝く剣が出た。



「さようなら。」



一振りでレッドウルフは焼き死んだ。


「勇者様。ありがとうございました。それでは、進みましょうか。」



「……………うん。おねがい。それじゃぁ、着くまで寝るね。おやすみ。」





商人side


「ほんとに寝た………勇者様も流石に人間ってことですかな。ま、しがない商人には分かりかねますがね。さっさとウルザまで連れて、報酬貰ってこのことは忘れましょうかね。」




『そのとおりだ。貴様は死んでもらう。『勇者』と話した人間などいない方がいいからな。』



おそらく、わが国の対人間部隊。



モンスター………つまり、魔物の相手は探索者が。では、人間………犯罪者の相手は??



それが、この部隊なのだろう。だいたい、4、5人追加で隠れているな。






「ふーん。まぁでも、依頼なんでどいてもらえますかね??そもそも、相乗りですし。私と『勇者』様で契約をかけましたから。」


知らないフリをしておこう。



そして、契約。

これは破ってはならず、破ると罰が執行されるような魔法。天秤にかける魔法。因みに、今回の契約はかなり勇者側に偏っている。






「なるほど。内容は??」


「『勇者』様が乗ったという事実をしゃべってはならない。私は相乗りを希望する人間を乗せただけ。といつも通りになる。破ったら、死ぬ。」



「ふむ、よかろう。では、さっさと相乗りする人間をウルザへ持ってけ。」



「はいはい。」



あー、面倒な。契約かけなきゃ。



勇者サイド!!


「お嬢さんー。起きてくださーい。」


「うみゅ。」

「起きましたねー。ウルザですよ〜。」

「おおー、ここがウルザ。広い。…………名前は??」



おー、おっきい。城に城壁。流石は2番目に大きい都市であり、首都に最も近い都市。


カップルも、子供連れも、みーんな幸せ。

んな訳あるか、ボケが。

裏道に一歩進めば…………そこはまさに地獄。まさに闇といった感じ。誰も近寄らないし、近づきたくもない。


「関係なくなります。必要ありませんよ。」

「でも………」

「不要です。勇者がこんなオンボロ馬車に乗ったって知られるとイメージに関係するので。」


「ふーん、わかった。じゃぁ、私の名前は…………『アリス』。これからも、そう呼んで。」



「かしこまり致しました。『アリス』様。」

なぜ、ここでアリスだけが出てきたのか。まったく分からないけど、そう、『名前』を語るべきだと感じた。


「うん。じゃぁね。…………あ、商会の名前は??」

ふーっ。って嘆息した息を吐いた。

「『グレーテル商会』です。どうぞ、贔屓にしないでくださいね。」


なんと、商会も持っていたらしい。バックしてくれるかな。そしたら、楽なんだけど。




「あ、しがない商会なので、バックは無理ですね。」

「ふーん。あ、そう。わかった。またね。」


「ええ、それでは。」




こうして、ボクは気怠い『魔王』討伐の一歩を歩んだ。





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