第2話 貴族の場所でのシゴキ

「遅い。遅い遅い遅い!!もっと早く走れぃ!!」




ボクは今、貴族の敷地内を走らされている。



「………はぁ、………はぁ、………はぁっ!!」


「遅い!!もう一周!!」



ボクは、数日前まで、平民だったのに。



こんな場所で、数日間マナーを叩き込まれ、学業も詰め込まれた。


ここは地獄だ。まるで、鳥籠のように感じる。



「はい。」




今は走る。無心で。



『勇者』たる者、基礎がなっていないといけないらしい。



土台すらないけど。



でも、怖いから口答えはしない。



『はい』か『Yes』のどっちか。だから、はいを選ぶ。





「ふむ、そろそろ体力はついてきたようだな。では、休憩後、型を教える。」



「はい。」


なんだかんだでこの貴族様は優しい。

厳しいけど、ボクを(おそらく『勇者』を)生き抜かせる為だと理解した。





3分たった。もう充分だ。『勇者』はすぐ体力が回復するらしい。

だから、楽だ。ただ、根気とか、精神が回復するとは言っていない。



「では、休憩はしまいだ。型を教える。」


「はい。」



『勇者』は、型や技を見て覚えることが可能らしい。


確かに、物覚えは良かった。人の名前を覚えるのはかなり苦手だったけど。


数時間ほど型を確認していると……………

「…………では、模擬戦をはじめる。」



「もうですか??」




「あぁ、あとは実戦………と行きたいところなのだが、模擬戦をする。私の騎士とだ。」




「わかりました。」









練習場にて。





「では参る。」



とても強そう。………こう、筆舌しがたいけど、圧倒的格上なのだと、わかる。



「………」


無言でボクは剣を構えた。



「はじめっ!!」




声がした。




「シッ!!」


「………っ!!」


予想以上に、強かった。ただの老獪な身体じゃなかった。普通に20歳あたりの大人より強いと感じた。


「ふむ、速度、対応申し分ないな。では、攻撃はどうかな??」


向こうは受けの姿勢。つまり、攻めてこいと。なるほど。舐められている。



「…………っ!!」



攻撃を仕掛けることにする。




右上か、の切り下ろし。右上への切り返し。背後に回って左肩から右腰へ下ろす。心臓を突き刺し。身体も使う。殴る。蹴る。魔法も使う。




だが…………


「ほう??温いな。」



一瞬で全部対処された。


「っ、ぬるくてごめんなさいっ!!」



本命のゴリ押し。


「……ふん。」



これも効かない、と。



「っち」



舌打ちが出てしまうのは致し方ないだろう。




「悪くはないが、もう少し柔軟になるとよい。」


しかもダメ出し。はぁ、気分落ちるわ。




「総評、甘く見積もって80点。厳しく言って60点、といったところだな。初日にしては悪くはないな。」



しかも、点数は本人ではなく、貴族がつける。それで神経が苛立ってしまうのも仕方ない。

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