第13話 狭い部屋に全員集合じゃ!


 クレインと一緒にダンジョンを進んで行く。

 どうやら、心配していたほど、クレインと話したりしなくて済むことに気づいた。

 というのも、ひっきりなしに魔物が現れて、二人ともひたすら戦い続ける羽目になったからだ。


「可憐に舞い散れ! ブラッドローズ!」


 クレインがレイピアで、正面の剣を持ったスケルトンの頭蓋を貫く。間近の敵をクレインが相手している間に、遠くに弓を構えたスケルトンを見つけた俺は、軽く息を吸い込んだ。


「咆哮じゃ! すぅーっ……ハァ!」


 ゴーレムを倒した攻撃の、数百分の一くらいの威力の咆哮ビームが、遠くのスケルトンを貫通して粉々に砕き、そのさらに遠くの暗闇まで明るく照らした。


〈咆哮きたーっ!〉

〈他の奴まで死んでるじゃんw〉

おしんこナース:〈お口大きく開けてて可愛いねえ〉


 近くにいたスケルトンたちも数体巻き込まれて吹き飛ばされて崩れ、残りのスケルトンをクレインが手際よく処理していく。


「むぐぐ……」


 認めたくはない、が……クレインという男、決して弱くはない。

 それに、その破壊的なコミュニケーション能力の欠如にも関わらず……非言語的な息の合わせ方は達人のそれだった。


 倒して欲しい敵を何も言わずとも的確に優先して処理し、気が付けば片づけている。何も言っていないのに、お互い示し合わせたように別の標的を攻撃しており、間違って同じ敵を狙うようなことは一度も起きなかった。


「ふっ、やるじゃないか、龍神姫。僕たちは運命を感じるほどに、息ピッタリのようだね?」

「だああぁっ! 言うんじゃない! わらわはぜったいに認めぬからな!」


 ついにスケルトンの代わりに、コボルトが現れ始めた。コボルトはスケルトンより素早く、知能も高い。クレインと言い合いをしながらも、お互い攻撃の手を緩めずに、まっすぐ突き進んでいく。


「素直じゃない子だ……このじゃじゃ馬め!」

「お主はいちいち言い方が気持ち悪いんじゃ!」


 跳びあがって、龍気術の気を込めた尻尾でコボルトを弾き飛ばすと、脇にいたもう一体がクレインの一撃によって貫かれる。

 クレインの攻撃後の隙を狙うように、姿勢を低く突っ込んでくるコボルトの後頭部に、気を込めた足でかかと落としをお見舞いすると、コボルトは地面に叩きつけられ、動かなくなった。


「よっ、と……しかし、きりがないのう」


 目の前の一団を倒すと、さらにその先に十を超えるコボルトの集団が見える。その前にはスケルトンの骨が転がっているが……魔物同士で争ったりでもしたのだろうか。


「帰還石は持ってるのかい? 龍神姫」

「一つ持っておる。お主は?」

「僕も一つ。それなら……まだ舞える!」


 帰還石はその名の通り、使用すればダンジョンの入り口まで転送される脱出アイテムだ。使用してから転送が完了するまで無防備になるので、敵のいない落ち着いた場所でしか使えないが、深層まで潜るのには必須になる。


 帰還石はダンジョンごとに固有なので、そのダンジョンで入手したものしか効果は無い。入手法はダンジョン内の宝箱に入っていたり、敵を倒した時に持っているものを落としたりと様々だが、偶然今までの探索で一つだけ手に入れていた。


 見つけられるかどうかは完全に運なので、二人とも持っているのは幸運だった。


「おっと、あれを見たまえ龍神姫。奴らを片づけたら、あそこで休もう」


 コボルトの集団のすぐ傍の、通路の壁に小さな扉があった。おそらく小部屋があるのだろう。確かに入ってから連戦続きで、休むことなく地下五階まで来てしまった。そろそろ休息を挟んでもいい頃合いだろう。


「そういうことなら……ちょいと張り切るかのう」

「よろしく頼むよ」


 すぅー、先ほどよりも多く息を吸い……勢いよくカッ、と吐き出す。


 ギィンッ!


 閃光が真っ直ぐ走り、コボルトの集団の中心を貫き、一瞬で遥か遠くまでを照らす。


 十体を超えるコボルトのうちほとんどは光線に貫かれて息絶え、直撃を受けていないものさえも、その風圧に巻き込まれるように吹っ飛ばされ、壁や天井、地面に打ち付けられて、再起不能になった。


 一撃。

 龍の咆哮は、たった一撃で、敵を一掃した。そんな威力だからこそ、使いどころは考えなくてはならない。気を張り巡らし、魔物以外の生命体を巻き込まないように努めなくては。


 魔物以外の生命体を、といえば、実は先ほどから何となく、気を通して他の探索者の気配を感じていたのだ。


「素晴らしい働きだった。褒めてつかわそう……はーっはっは!」

「あっ、ちょっと待つのじゃ!」


 クレインが上機嫌で、その小部屋の扉を開けようとした時……


 ちょうど反対側から扉が開き、クレインは顔面でその扉を受け止める羽目になった。


「ぐばべっ!?」

「きゃあぁっ!?」


 意図せずクレインを吹き飛ばした少女は驚き悲鳴を上げる。その顔は見覚えのあるものだった。


「何と! カレンではないか!」

「リューちゃんじゃない! やっと会えた!」


 カレンは勢いよくこちらに走ってくると、思いっきり抱きしめて小さな俺の身体を抱き上げた。


「ぬおぉっ! 放すのじゃ!」

「探したんだよリューちゃん! 何度諦めようと思ったことか!」


 カレンに続いて、ミオリとサラも小部屋から姿を現した。


〈ポッピンライトだ! 可愛い!〉

〈知り合いだったのか?〉

〈多分、リューを捜してたんだよね〉


「あー……カレンがごめんね、おっさん。だいじょぶそ?」

「おっさんではない! お兄様と呼ぶがいい!」

「うっわ、鼻血出てる。ちょ、血が飛ぶから叫ばないでよ! サラ、治療して!」


〈きたね〉

〈おっさん呼び笑う〉


 サラ達もクレインの治療を終えると、こちらに駆け寄ってきた。


「まさかお主たちもここに来ておるとはのう」

「偶然じゃないってば。私達、リューちゃんを探してたの!」

「はて? 何か用事が……?」

「盛り上がっているところ悪いが、龍神姫、それにかしまし娘たちよ。ここではなんだ、小部屋に戻ろうではないか」

「かしま……何?」


 確かにクレインの言う通りだ。通路ではまたいつ魔物が近づいてくるかわからない。俺たちは一度、小部屋へと退避して情報交換することになった。

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