第25話 雷の牙

​第25章:雷の牙、炎の爪

​雷鳴山の中腹、濃い雷雲に覆われた空間で、ライオネルは雷狼と対峙していた。雷狼は、その全身から雷を放ち、まるで雷そのものが形になったかのような存在だった。

​雷狼は、咆哮を上げ、ライオネルに向かって雷の塊を放ってきた。ライオネルは、雷の力を盾のように展開し、雷の塊を吸収した。

そしてサンダーバードを倒した時のようにライオネルも雷を放つ。

しかし雷狼は同じようにライオネルの雷を吸収してしまった。

​「ヴァルカン、どうすればいいんだ? こいつは俺の雷を吸収する!」

​ライオネルが焦りを感じていると、ヴァルカンは静かに言った。

​「お前の雷は、神の雷と同じ性質を持つ。神の雷に匹敵する雷狼が、お前の雷を吸収するのは当然だ。だが、お前は雷狼よりも、神に近い存在だ。奴の力は、お前の雷には及ばない」

​ライオネルは、ヴァルカンの言葉を信じ、再び雷を放った。しかし、雷狼は、その雷をすべて吸収し、さら力を増していく。

​雷狼は、その巨大な口を開き、ライオネルに向かって、巨大な雷のブレスを放ってきた。ライオネルは、そのブレスを避けきることができず、体に直撃を受けた。

​雷が体を駆け抜け、ライオネルは地面に叩きつけられた。彼の体からは、力が抜け落ちていく。

​「クソッ、このままでは…!」

​ライオネルは、雷狼の姿を見上げながら、絶望を感じていた。その時、彼の脳裏に、カインとの修行の記憶が蘇った。

​「炎は、ただの熱じゃない。それは、俺の意志であり、俺の怒りであり、そして、俺の願いだ。俺の全てを炎に込めることで、炎は俺の思い通りに燃え盛る」

​そして、カインが言った、もう一つの言葉。

​「炎を消そうと思うな。炎を、お前の雷で包み込め」

​ライオネルは、ハッとした。彼は、今まで雷で炎を「消す」ことばかり考えていた。しかし、カインは、雷で炎を「包み込む」ことを教えたのだ。

​(そうだ、逆だ! 雷で火を起こすんだ!)

​ライオネルは、雷狼から吸収した雷の力を、自分の内に溜め込んだ。そして、雷の力を、雷狼の体内で爆発させるのではなく、雷狼の体内で燃え盛る炎へと変えることを想像した。

​ライオネルは、すべての力を雷に込め、雷狼に向かって放った。雷は、雷狼の体を貫通し、体内で小さな火花を散らした。その火花は、ライオネルの意志に応えるかのように、燃え盛る炎へと変わっていく。

​雷狼は、体内で燃え盛る炎に苦しみ、絶叫を上げた。その体から、雷が不規則に飛び散り、やがて雷狼は、燃え尽きた木炭のように、黒い塊となって崩れ落ちた。

​ライオネルは、その場に崩れ落ちた。彼の体は、ボロボロだったが、その瞳には、勝利の光が宿っていた。

​「ライオネル、やったな…!」

​ヴァルカンの声が、ライオネルの心に響く。ライオネルは、自分の新たな力に、かすかな希望を見出していた。

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