第23話 賢者
雷鳴山は、その名の通り、常に雷が鳴り響く山じゃ。だが、その雷は、ワシの力ではない。ワシの名はアンゼルム。世間では賢者と呼ばれておる。ワシは、神の欺瞞に気づき、この山に身を隠した。神の支配から逃れるには、この雷鳴山が唯一の安息の地じゃった。
この山には、ワシの知識の全てが詰まっておる。魔術、錬金術、そして、この世界の理。その知識は、時として、この世界を歪めるほどの力を持つ。じゃからこそ、ワシは誰にも見つからぬよう、ひっそりと暮らしておった。
しかし、最近になって、ワシの平穏な日々は脅かされておる。一頭のドラゴンが、この山に棲みついてしまったのじゃ。そいつは、ワシの結界を破り、ワシの住処を脅かそうとする。ワシは、ドラゴンを追い払おうと試みたが、奴の力は想像以上じゃった。
「クソッ、このままでは、奴にこの場所を見つけられてしまう…」
ワシは、焦りを感じておった。ワシの知識は、この世界の真実を暴くためのものじゃ。もし、ワシが奴に捕まれば、全ての計画が水の泡になってしまう。
そんな時、ワシは、ギルドの受付嬢であるリリアに連絡を取った。リリアは、神の理から外れた存在であるワシを、唯一の理解者として信じてくれた。そして、ワシの危機を伝えた。
「賢者様、どうにか、あなたを助ける方法を見つけます」
リリアは、そう言ってくれた。しかし、ワシには、彼女に何かを頼むことなどできんかった。ドラゴンを倒すことなど、並大抵のことではない。
そんな中、リリアから、一人の冒険者がワシの元へ向かっておると連絡があった。
「その男は、神の雷と同じ力を持つ者です。彼は、きっと賢者様を助けてくれます」
ワシは、リリアの言葉を信じることができんかった。神の雷と同じ力を持つ者など、この世界には存在しない。それは、神の領域じゃ。だが、ワシは、彼女の言葉に、わずかな希望を抱いておった。
「どうか、無事でいてくれ。ワシは、この世界の真実を、人々に伝えなければならないのじゃから」
ワシは、雷鳴山の最奥で、ただ一人、祈り続けた。そして、ワシの住処へと向かってくる、一筋の雷の光を感じておった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます