第22話 クエストの秘密
ライオネルがギルドを後にしたのを見届けたリリアは、張りつめていた緊張を解き、静かに息を吐いた。彼女の笑顔の裏には、安堵と、かすかな後悔が入り混じっていた。
(ごめんなさい、ライオネルさん。でも、あれしか方法がなかったの…)
リリアは、ギルドの喧騒が遠い世界のように感じながら、自分の心の中でライオネルに語りかけた。彼女は、ライオネルが探している賢者の正体を知っている。そして、その賢者が、今、大きな危機に瀕していることも。
賢者は、ゲッカ帝国の魔術師塔にいると噂されているが、それは賢者が自分の正体を隠すために流した偽りの情報だった。賢者は、神の欺瞞に気づき、人々の信仰を疑い始めた者として、聖神柱教会から命を狙われている。賢者が本当に身を隠している場所は、ルナリアからほど近い、雷鳴山の最奥だった。
雷鳴山は、その名の通り、絶えず雷が鳴り響く危険な山だ。しかし、その山は、神の理から外れた特殊な場所であり、賢者が身を隠すには最適の場所だった。しかし、最近になって、その山にドラゴンが棲みついてしまい、賢者は山から出られなくなってしまったのだ。
賢者は、リリアに助けを求めてきた。だが、ギルドの冒険者たちは皆、賢者の居場所を知らない。そして、たとえ知っていたとしても、ドラゴンの討伐はあまりにも危険すぎる。賢者は、自らの危険を冒してまで、人々に真実を伝えようとはしなかった。
そんな時、ライオネルがギルドに現れた。彼の白銀の髪に走る黄色のメッシュ。そして、彼が使う、世界の理から外れた雷の力。リリアは、彼が神に選ばれながらも、神に裏切られた者であることを見抜いていた。
「ライオネルさん…あなたなら、賢者の元にたどり着くことができるはず」
リリアは、ライオネルに託したクエストを見つめた。それは、単なるドラゴン討伐のクエストではなかった。それは、神の欺瞞を暴くための、最初の、そして最も重要な一歩だった。
リリアは、ライオネルがこのクエストをクリアすることを信じていた。そして、ライオネルが賢者と出会い、彼を救うことができると信じていた。
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