第21話 雷鳴山
魔術師塔での聞き込みに限界を感じたライオネルは、賢者が本当にここにいるのかと疑い始めていた。彼は一度、情報を整理するためにも、冒険者ギルドに戻ることにした。
ライオネルがギルドの扉を開けると、いつものように活気に満ちた喧騒が彼を迎え入れた。受付嬢のリリアは、ライオネルの姿を見つけると、にこやかに微笑んだ。
「ライオネルさん、お久しぶりです。何かお探しですか?」
「ああ。賢者の手がかりを探していたんだが、どうも見つからなくてな。何かいいクエストはないか?」
ライオネルがそう言うと、リリアは少し考え込んだ後、一枚の紙を差し出した。
「実は、最近、特別なクエストが舞い込んできたんです。近くの『雷鳴山』に棲みついたドラゴンを討伐するというものなんですが…」
リリアは、ライオネルの表情を窺うように、言葉を続けた。
「かなりの実力者でもない限り、手を出さない方がいいとされているクエストなんです。でも、ライオネルさんの力なら…」
ライオネルは、リリアの言葉に驚きを隠せない。冒険者になって間もない自分が、いきなりドラゴン討伐のクエストを受けることになるとは思ってもみなかった。
「ドラゴン、か…」
ライオネルは、ドラゴンの恐ろしさを知っていた。ヴァルカンからも、この世界に棲むドラゴンは、神の雷に匹敵するほどの力を持つと聞かされていた。
「ライオネル、このクエストを受けろ。ドラゴンは、この世界の理に縛られる魔物とは違う。神の力の一端を持つお前なら、奴らを相手にできるかもしれない」
ヴァルカンの声が、ライオネルの心に響く。
「このクエスト、受けます」
ライオネルは、迷うことなく答えた。リリアは、ライオネルの決意に驚きながらも、すぐに手続きを済ませた。
ライオネルは、ギルドを後にした。彼の心は、ドラゴンの力に対する不安と、新たな力への期待で満ちていた。雷鳴山。その名を聞いた時、ライオネルは、何かが彼をその山へと導いているような、不思議な感覚を覚えていた。
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