第20話 神の力の一端

​​カインとの修行を終えたライオネルは、自身の雷の力が新たな段階に進んだことを実感していた。彼の雷は、もはやただの破壊の力ではなく、彼の意志に呼応する、生きているかのような力へと変わっていた。

​「ヴァルカン、俺の雷は、本当に強くなったのか?」

​ライオネルが心の中で問いかけると、ヴァルカンは静かに答えた。


​「ああ。カインという男は、お前の力の本質に気づき始めていた。だからこそ、彼は炎を消すという、雷の性質とは全く逆の修行をお前に課したのだ」

​ヴァルカンの言葉に、ライオネルは驚いた。


​「疑問に思ったが、普通は雷で炎を消すなんて、物理的に不可能だろう?」

​「そうだ。本来ならばな。雷とは、大気中の電気を一瞬で解放する現象だ。雷が通った場所は、超高温となり、あらゆるものを焼き尽くす。炎を消すなど、魔術の理に反している」

​ヴァルカンは続けた。

​「しかし、お前はそれをやってのけた。それは、お前の雷が、単なる魔術ではないからだ。お前の雷は、この世界の理から外れた、特別な力だ」

​ライオネルは、自分の力が特別なものだという事実に、困惑した。

​「なぜ、俺の力が特別なんだ?」

​「お前は、この世界を創造した神と同じ、雷の力を持つからだ。神がこの世界を創造したのも、雷の力だ。お前は、その神の力の一端を、生まれつき宿している」

​ヴァルカンは、静かに語った。

​「カインは、お前の特別性に気づき、お前の雷を、ただの破壊の力から、意志を持つ力へと導いたのだ。お前は、カインから大きな学びを得た。」

​ライオネルは、ヴァルカンの言葉に頷いた。彼の雷は、もはやただの憎しみではない。それは、セシリアへの愛、アルスを救いたいという願い、そして、神の欺瞞を暴くという彼の決意を込めた、新たな武器となっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る