第18話 炎の魔術師
ライオネルは魔術師塔で賢者の手がかりを探し続けたが、収穫はなかった。苛立ちを募らせるライオネルに、ヴァルカンは静かに言った。
「賢者は、知識を求める者を試す。お前も、ただ情報を得るだけでなく、何かを学ぶべきだ」
ヴァルカンの言葉に、ライオネルはハッとした。彼は魔術師たちの話に耳を傾けるだけでなく、彼らが使う魔術を観察し始めた。
その時、一人の魔術師がライオネルに話しかけてきた。彼は、燃え盛るような赤い髪を持ち、その瞳には炎が宿っているかのようだった。
「アンタ、雷とは珍しい魔術を使うな。」
「…ああ」
ライオネルは警戒したが、男は敵意を抱いていないようだった。
「俺はカイン。炎の魔術師だ。アンタの雷の魔術は一瞬の爆発力はすごいが、持続力がないのが難点だ。炎の魔術は、爆発力はないが、燃え盛る炎はあらゆるものを焼き尽くす」
カインは、自分の掌に小さな炎を灯し、ライオネルに見せた。ライオネルは、カインの話に興味を抱いた。彼は、雷の力をただ破壊のためだけに使うことしか知らなかった。
「ライオネル。彼の話を聞け。お前の雷は、まだただの光。彼の炎から、お前の雷を武器に変える方法を学べ」
ヴァルカンの声が、ライオネルに響く。
ライオネルは、カインに雷の魔術について尋ねた。カインは、ライオネルの問いに丁寧に答えた。彼は、炎の魔術を操るには、炎への愛が必要だと語った。
「炎は、ただの熱じゃない。それは、俺の意志であり、俺の怒りであり、そして、俺の願いだ。俺の全てを炎に込めることで、炎は俺の思い通りに燃え盛る」
カインの言葉は、ライオネルに衝撃を与えた。彼の雷は、ただの怒りだった。しかし、カインの炎は、彼の全てを込めた、生きている力だった。
ライオネルは、カインの話からヒントを得て、雷の力を自分の感情と結びつける方法を試みた。セシリアを失った悲しみ、アルスを救いたいという願い、そして、神への憎悪。それらの感情を雷に込めることで、ライオネルの雷は、より鋭く、より強力なものへと変化していった。
数週間が過ぎた。ライオネルは、毎日カインと魔術の訓練を重ねていた。彼の雷は、もはやただの光の球ではなく、彼の意志と感情を込めた、鋭い槍のようにも、巨大な盾のようにも形を変えることができた。
カインは、ライオネルの成長に驚きを隠せない。
「アンタの雷は、俺の知ってる魔術とは違う。まるで、意志を持っているようだ」
カインの言葉に、ライオネルは胸の奥でヴァルカンの声を聞いた。
「そうだ。お前の雷は、生まれつきの才能。魔術師が世界の理を借りて力を振るうのに対し、お前は自らの内なる力で雷を生み出す。その性質は、神の力に近い。この男は、その本質に気づき始めている」
ライオネルは、自分の力が魔術師たちとは違うことを確信した。カインとの修業は、ライオネルに新たな視点を与え、彼の雷の力を、単なる破壊の力から、意志を持つ武器へと変えつつあった。
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