第17話 手がかり
ライオネルは真実を告げられて考え込んでいた。
「私は、一旦教会に戻ります。あまり長く外にいては、不審に思われますから」
エリザベスはそう言って、ライオネルに背を向けた。
「賢者を探してください。彼なら、神が隠した真実を解き明かす鍵を持っているかもしれません」
「賢者はどこにいるんだ?」
ライオネルの問いに、エリザベスは振り返り、静かに答えた。
「ゲッカ帝国の魔術師塔にいるとの噂です。しかし、我こそは賢者だと名乗るものが多く…誰が本物の賢者なのかは、誰も知りません。あなたは、ご自身の目で、本物の賢者を見つけてください」
エリザベスは、そう言い残すと、人々の間を縫うようにして去っていった。その背中には、かつてセシリアが背負っていた孤独な決意が感じられた。
ライオネルは一人になった。しかし、彼の心は、以前のような絶望に満ちてはいなかった。エリザベスという仲間ができたこと、そして、アルスを救うという新たな目的が、彼に生きる力を与えていた。
「ライオネル。賢者を探す旅は、お前が想像するよりも危険なものになるだろう。賢者は、神の代行者の中でも、最も警戒すべき存在だ」
ヴァルカンの声が、警告を発する。
ライオネルは、魔術師塔へと続く大通りを歩き始めた。塔は、まるで空を突き刺すかのように、威圧的にそびえ立っている。
塔の入り口には、多くの魔術師たちが集まっていた。ライオネルは、賢者を見つけ出す手がかりを探そうと、彼らの会話に耳を傾けた。しかし、皆が「自分こそが賢者だ」と名乗り、互いに自慢話を繰り広げているだけだった。
「ヴァルカン、これじゃあ、誰が本物の賢者か、見当もつかない」
ライオネルが心の中で呟くと、ヴァルカンは静かに答える。
「賢者は、知識をひけらかすだけの愚か者ではない。奴は、この世界の真実を、誰よりも深く知っている。その知識は、時として、この世界を歪めるほどの力を持つ」
ライオネルは、ヴァルカンの言葉を胸に、賢者の手がかりを探し続けた。魔術師たちの話に耳を傾け、彼らの魔術を観察したが、本物の賢者を見つける糸口は、見つからなかった。
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