第16話 失われた光

​雨が降り始めた。雷鳴が轟き、空に稲妻が走る。

​セシリアは、一人、神がいるという人里離れた廃墟へと向かっていた。彼女は、神を深く信仰する者として、神の真実を知ってしまった。神は、世界を完璧なものにするために、不都合な存在をすべて消し去ってきた。その事実に気づいた彼女は、神を信じ続けることと、真実を無視することの間で、深く苦しんでいた。


​セシリアが廃墟へと向かったことを知ったライオネルは、彼女の後を追った。ライオネルは、セシリアの心に何か重いものがのしかかっていることを感じていた。


​ライオネルが廃墟にたどり着いた時、セシリアはすでにそこにいた。その時、空が裂けたかのように、眩い光が差し込んだ。その中心に、一人の男が立っていた。全身を光で包まれ、その顔は見る者を圧倒する威厳に満ちていた。


​「汝、セシリア。神の真実に触れた不届き者よ。汝の存在は、世界の秩序を乱す。今、ここでその命を絶て」


​男の声が、雷鳴のように響き渡る。ライオネルは、その言葉に、神の真実を確信した。


​「やめろ!」


​ライオネルは叫び、神を名乗る男に向かって、雷を放った。しかし、ライオネルの雷は、男の光に触れることもなく、霧散してしまった。

​「無駄だ。汝の力など、神たる私の前では無力」

​男はそう言い放つと、ライオネルに向かって、強烈な一筋の雷を放った。それは、ライオネルの雷とは比べ物にならないほど、純粋で、強大だった。

​ライオネルは、死を覚悟した。その時、彼の目の前で、セシリアが動いた。






​セシリアは、ライオネルを庇うように、彼の前に飛び出した。ライオネルは、彼女の名を叫んだが、もう間に合わなかった。


​神の雷が、セシリアの体を貫いた。

​セシリアは、ライオネルの腕の中に倒れ込んだ。彼女の体からは、光が溢れ出し、ライオネルの体へと流れ込んでいく。それは、まるで二つの光が一つになるかのように、静かに、そしてゆっくりと融合していった。


​「セシリア…! なぜ…!」

​ライオネルは、血を流すセシリアを抱きかかえ、絶望に震えた。


​「素晴らしい。その命は、私に逆らった代償だ」

​神はそう言い放つと、光となって消えていった。


​ライオネルは、ただ一人、冷たくなっていくセシリアを抱きしめた。その時、彼の心の中で、何かが音を立てて砕け散った。

そして、彼の体の中に、セシリアの力が宿ったことを、彼は知る由もなかった。

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