第7話 ゲッカ帝国
ライオネルは、自身を追放したサンライズ王国を避け、国境を越え、隣の大国であるゲッカ帝国へと向かった。サンライズ王国が神の教えを第一とする厳格な国であるのに対し、ゲッカ帝国は、多様な文化や力を受け入れる開かれた国だ。魔物や魔族と過ごした経験が、ライオネルの心を動かしていた。
ゲッカ帝国の首都「ルナリア」は、石造りの街並みがどこか無骨な美しさを持つ都市だった。サンライズ王国の街とは異なり、神殿の尖塔は影を潜め、代わりに巨大な魔術師塔が空にそびえ立っていた。
ライオネルは、情報収集のため、冒険者ギルドへ向かうことにした。ギルドの扉を開けると、騒がしい熱気が彼を包み込んだ。巨漢の戦士、小柄な魔術師、そして奇妙な道具を背負った男など、様々な種族の冒険者たちが酒を飲み、笑い合っている。
「ライオネル。この街なら、お前も異端とは見なされぬだろう。だが、用心は怠るな」
ヴァルカンの声が、黒い石から直接脳内に響いてくる。
その時、一人の少女がライオネルに駆け寄ってきた。年はライオネルと同じくらいだろうか。明るい金髪をポニーテールに結び、大きな瞳は好奇心で輝いていた。彼女は手に大量の書類を抱え、慌てた様子でライオネルに話しかけた。
「あの、すみません! 新人さんですか? 私はリリア。このギルドの受付嬢をしています。冒険者登録、手伝いますよ!」
彼女はライオネルの返事を待たずに、彼の目の前に積まれた書類の山を片付け始めた。その手際の良さと、屈託のない笑顔に、ライオネルは少し戸惑いを覚えた。
「リリア、と呼んでくださいね。もしかして、あなたのその力、雷ですか? すごい! 実は私、雷の魔法が大好きなんです! 昔、雷の魔法で世界を救った勇者の話を聞いてから、ずっと憧れていて……」
リリアは無邪気に語り続ける。彼女が語る「雷の勇者」の話は、ライオネルが知る、忌み嫌われた自分の力とはあまりにもかけ離れていた。
「……勇者、か」
ライオネルが呟くと、ヴァルカンの声が再び響く。
「勇者、聖女、賢者、大精霊。神の代行者たちだ。お前はこれから、彼らを探し、この世界の真実を暴かねばならぬ。この少女、リリアもまた、その手がかりとなりうる存在かもしれぬぞ」
ライオネルは、リリアの笑顔をじっと見つめたのだった。
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