第6話 神の代行者たち
ヴァルカンは、ライオネルの修行をより具体的にするため、一つの真実を告げた。
「神を倒すためには、この世界の理を歪めるほどの強大な力が必要だ。だが、お前一人の力では足りぬ。神の力を凌駕するには、神の力を持つ者同士が手を取り合う必要がある」
ライオネルは困惑した。
「神の力を持つ者? そんな奴らが、俺たちの味方をするのか?」
ヴァルカンは、静かに頷いた。
「この世界には、神がその力を分け与えた4人の代行者がいる。勇者、聖女、賢者、そして大精霊だ。彼らは神の意思を代行し、この世界の秩序を保っている。しかし、その力は神そのものではない。彼らもまた、神の思惑通りに動かされているだけの存在だ」
「…つまり?」
「彼らを説得し、仲間にするのだ。彼らの中に、神が隠した世界の真実を暴くことができる者がいるかもしれない。そして、彼らが持つ神の力と、お前の雷の力を合わせれば、神の理そのものを書き換えることができるかもしれない」
ライオネルは、途方もない計画に眩暈を覚えた。神の代行者たちを仲間にする? それは、これまで敵として認識していた存在に手を差し伸べるということだ。しかし、ヴァルカンの言葉には、彼の過去の苦しみから来る確信が満ちていた。
「一つ問題がある。俺のこの体では、人間が住む世界に長く留まることはできない。神の使徒に見つかれば、すぐに排除されるだろう。それに、この城から離れることも難しい」
ヴァルカンは異空間から石を取りだし、その石に手をかざす。
「お前は一人で行け。俺の霊体をこの石にに宿らせる。そうすれば、遠く離れていても、俺はお前の行く末を見守り、助言を与えることができる」
ライオネルは、ヴァルカンの言葉に迷いながらも頷いた。彼は単なる復讐心から始まった旅が、いつの間にかこの世界の真実を巡る壮大な冒険へと変わっていくのを感じていた。
翌日、ライオネルは一人、魔王城を出発した。手には、ヴァルカンが与えた、彼の霊体を宿した小さな黒い石が握られている。
広大な荒野を抜け、ライオネルはかつて自分が追放された人間の街を目指す。彼の心には、神への憎しみ、ヴァルカンとの約束、そしてこれから出会うであろう「神の代行者たち」への期待と不安が入り混じっていた。
旅の始まりだ。この世界の真実を暴くための、そして何よりも、セシリアの死の真実を明らかにするための、長い旅の始まりだった。
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