第3話 吸血鬼慄く


────悪くない。


 老夫婦から献上されたりんごを食しながら、私は街へと続く街道をとてとてと歩いていた。

相変わらず、太陽は私を殺そうと力を強めている。

 老夫婦が言うには村から街へは片道3時間ほどかかるらしい。

 しかし、りんごでなんとか腹の気を紛らわせる事に成功した私は足取りも軽くなってきていた。



          ♢



「!」


 歩き続け昼頃になんとか街に到着した私だったが、100年前にはなかった建物や露店に目を奪われ挙動不審になる。


「お兄さん、街は初めてかい?」


 挙動不審になり、突っ立たままの私に声を掛けてきたのは露店の中年の店主だった。


「この辺りに来たのは久しぶりだ。以前は大きな沼地だったはず」


「ああ……ってそれは100年ぐらい前の話じゃなかったかなあ」


小首を傾げる店主。

外で商売しているからか服は砂埃にまみれ脂汗を纏った小汚い男だ。

だが、3時間も日光の下を歩いたせいでりんごでなんとか紛らわせていた腹はまた悲鳴を上げはじめていた。選り好みしている余裕はない。


「そんな話はどうでも良い。私は腹が減っている。報酬は出す、血を分けてくれ」


私は深々と腰を折る。


「………血ぃ?あー……お兄さんもしかして吸血鬼か?」


「そうだ」


「悪い事は言わねえ。早く帰った方が身の為だぜ」


と男は辺りをキョロキョロと見回しながら、私に耳打ちしする。


「最近ここいらで魔物狩りが行われてるらしんだ。なんでも貴族の間で魔物を食べるのが流行ってやがるみたいでよお。ここいらの魔獣や竜族なんかの魔物は狩り尽くされちまったみたいなんだ」


「───なんだと」


私は分かり易く眉をしかめる。


「最近はあんたみたいな知能の高い魔人に目をつけた奴らが貴族に高く売りつけてやろうって血眼になって探してるらしくてさ」


気をつけろよと男は私の肩に手を置いたと思うと後に来た客と談笑を始めた。



────怖くね?



えっ、普通に怖くね!?どうした!100年の間に何があった人類?!

100年前とか穀物食って、魚とか食って満足してただろ?それがどうした?魔物を食う?最近は知能を持つ魔人らまで食う?気でも触れたか、おい!


妙な冷や汗が吹き出してきた。目眩もする。


いや、これはきっと腹が減りすぎたからだ。断じて人間を恐れているわけでない。断じてだ。


私はふらふらと今にも倒れそうになりながら街から離れる事を決めた。



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食悦のダリア おこめ @okome55

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