第2話 吸血鬼出会う
頼みの綱だった非常食はとっくの昔に消費期限切れだった。
賞味期限切れならなんとかなったかもしれないのに。
これはいよいよ外に出るしかないのか。
家の外に待ち構える太陽を思い出す。
───炙られる。
その恐怖が私を外から遠ざける。
このまま餓死するのを待つか、太陽に焼かれるか1つに2つだった。
♢
「あやー、ダリア様じゃないのお」
「んだんだ、久しぶりすぎて一瞬分からんかったわあ」
100年ぶりに会った人間は近所の村の老夫婦だった。
といっても、以前会った時は村でも評判の美少年と美少女だった気がする。対して私は100年前と変わらない姿。時の流れとは恐ろしいものだ。
「100年ほど寝ていた。食事をしたい。血を分けてくれる村の若者を紹介してくれ」
私は日焼け避けのローブから少し手を出し、村の方を指差す。
老夫婦はお互いを見やったと思うと、がははと笑いだす。
「ダリア様やあ。もうこの村に残っとるのはあたいらだけさあね」
「んだよお。若者は全員街の方へ出ちまって帰ってこねえんだ。ダリア様とおれらあだけで平均年齢100歳越えてるわあ」
とまたもがははと笑い合う老夫婦。
私はこの小さな村の外れで暮らしながら、時に食事が必要な際は村へ降り、村人の困り事を解決する代わりに血液を納めてもらいながら暮らしていた。
だが私が寝ていた間に老夫婦が言う通り賑わっていた村は寂れ、空き家だらけになっていた。
「あたいらが分けてあげたい所どこだけどおね。もうこんなじじばばの血飲んでも美味しくないでさあ、ねえあんた」
「んだんだ。ちょっと血ぃ抜いただけでコロっと昇天しちまうよお」
がははと笑い合う。私も負けじとがははと笑ってみせる。がはは。
笑えん。全くもって笑えん。
だが、こやつらの言う通り老人の血ははっきり言って飲めたものではない。腐った果物の搾りかすを飲んでいる方がまだいい。
どうしたものか。
「そうやわあ、ダリア様。街に行ってみたらどうさねえ」
「───街だと?」
「んだ。街に行けば新鮮な野菜や魚が簡単に手に入るでなあ。新鮮──元気で若い者もいっぱいおるから選び放題やでえ」
「そうやねえ。その方がええと思うわあ」
勝手に話を進める老夫婦。
「じゃあ、ここが新しく出来た道やからね。分からんなったら大きい道に出て通った人に尋ねるんやでえ」
そのまま勝手に話は進み、街までの地図やら水やらを持たせさせられた。
「久しぶりに元気な姿見れて嬉しかったわあ。相変わらず死体みたいな顔色やけど」
「何かわしらまで若くなった気ぃするでえ。
ありがとおなあ。まあわしらの方が年下やけど」
ローブ越しに肩や背中を勝手にぺんぺんと触ってくる。
「触るな、痴れ者が」
そう罵ると老夫婦はまた大口を開けてがははと笑い出し、
「子供の頃にもこうやって怒られたわあ」
「んだ。ローブ無理矢理剥ぎ取ろうとして怒られたんやっけえ」
と思い出に浸り出す老夫婦。
やめろ。そんな屈辱的な事を思い出させるな。
すると、また雷の様な轟音が腹部から鳴り響く。
「私は腹が減った。もう行く。せいぜい長生きしろ」
踵を返し街へと向かおうとすると、ローブの端をぐいっと掴まれ首が締まり「ぐえっ」と情け無い声が出た。
「ダリア様、これも持っていきやあ。いっぱい採れたんよお───りんご」
そう言って無理矢理握らされた手の上には血の様に真っ赤なりんごが座っていた。
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