3、あの場所に、いる

小学生のころ、家族と古い木造アパートに住んでいた。

ある日、学校の友だちが遊びに来た。

自分の部屋へ案内して、お菓子を食べながらふざけ合っていた。

夕方になり、友だちが帰るところで、その子がふと部屋の真ん中をじっと見て言った。


「ねえ、あそこに小さい女の子が体育座りしてるよ」


冗談のようにも聞こえなかった。私の胸は一瞬ぎゅっとなった。

(そんなはずない、いないよ)と言いたかったけれど、声には出せなかった。


それから何年かたって、中学生になった私は塾でできた友だちを家に招いた。

その日もくだらないことで盛り上がり、笑い合った。

急にその子が黙り込み、気まずそうに言った。


「この部屋……幽霊いるよ」


私は息を飲んだ。思わず、あのときと同じ場所を指さしていた。

小学生のとき友だちが言った、部屋の真ん中だ。

しばらくしてその子は小さな声で答えた。

「うん、そこ」


学校の友達と塾の友達は知り合いじゃない。

それなのに、同じ場所を指したという事実が、背筋を冷たくした。

あの部屋には、ずっと前から誰かがいるのかもしれない。

座ったまま、何も言わずに、こちらを見ている。

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