第2話 場違いハミングバード

 片思いしている女の子のことを想うと涙が出そうになる。この涙は「彼女が自分のものにならないから?」「ときどきお話できることが嬉しいから?」もしかしたら彼女は『5cm』くらいだけ僕のことが好きかもしれない。それは気になっている程度だけど。彼女が最も愛し、また彼女を愛する権利を持つ人物がいて、2人の思いが交差する。彼女が僕へ抱く『5cm 』はこれ以上進むことはないし、僕が彼女に届きそうな残り『5cm』は一生辿り着かない。僕はいつも怖気づいていて、「天秤のバランスが〜」とか「まるでさえずりだから〜」とか見当違いな憶測を立てては、反例を見つけようと血眼になっている。僕が泣きそうになって彼女の方を向いてあれこれ試行錯誤しようと練っている間に、3000種類の植物が舞って彼女は正式に幸せになる。そのとき僕は咽び泣いてやっと彼女に向けていた愛を自分に向けることができる。僕は僕を好きになりたいから(と思いたいから)、早く彼女に正しく幸せになってほしいと願っている。心臓を矢で射抜かれて血が噴き出した小鳥がいつの日か成長して真っ赤か瑠璃か、もしくは……綺麗に染まって自信を持って自分のことをうたいたい。







【あとがき】


心のなかにある心象風景を散歩してみる


空を見上げたり、木々のざわめきに耳を傾けたりする


紅茶を片手に夕暮れ時の街を見下ろしてみたりする


海の広さに恐れたり、川沿いの肌寒さに怯えたりする


何百年も前からあるような神社を探検してみたりする


まとわるような夏の輝きに一冊の思い出を添えて、公園のベンチに腰掛けてみたりする


しびれるような冬の厳しさの中に銀世界の美しさを愉しんでみたりする


きらめく葉っぱのしずくに思わず見とれたりする


不意に雨が降ってくる、梅雨の小さな雨、夏の大きな雨


前を向こうにも震えだしてしまって、下しか向けなくなる


涙なんて流してしまって、もがいても沈むばかりで、流れ着いた浜辺で上手に笑えなくなったりもする


前を向くと不意に他者が視界に入ってくるし、思わぬ罵声を浴びせられて僕のペースは乱れてしまう


必死に自分だけを見つめた


冷たいガラス窓とカーテンの隙間は寒くて凍えそうだったけれど、声を押し殺して流した涙に同情したお月様は僕の味方だった


散りばめた星の数を数えたら少しだけ空に浮けて、宇宙に還れるんじゃないかって錯覚できた


大好きな音楽を聴いて眠る午前の2時


それでもって立ち上がる午前の5時、朝焼けの空はまだ生焼けだったけれど、僕にはまだ未来があるように思えて、自転車で突き抜ける風のようになれたらと願ってペダルを漕ぐ


そうやって遠回りして見つけた、ハートの形をした石を大切にポケットにしまったら、まだ見たことのない花を探しに行く


恐れることはない、きっと大切な何かが見つかる


気付けばたくさんの言の葉が手のなかに


自分のペースで上手に整えたら、宝物になった




きみに共鳴してもらうためじゃない


それでも、一昨日に逃げたいけれど、どうしても明日に染まらないといけないときにふと思い出して、噛み締める唇の力が少し緩んで、うまく言葉が紡げるようになるための飴玉一粒にでもなってくれたら嬉しい






星凪莞さんの短歌一覧


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