第8話 ジャズヴォーカルのレッスン

という事で、今、ジャズ喫茶nで出会った師匠にジャズヴォーカルのレッスンを受けている。

音楽は学んだ事がない。

音楽はとにかくお金がかかる。というイメージがあるのと、自分には理解できないと解っていたからだ。

高校で合唱部にいた時に、ちょっとかじったんじゃないの?と思われる事が多いが、答えは否。

楽譜、音符の読み方を、教えてくれたのは確かだが、私は楽譜が読める様にならなかった。

なぜなら、理解出来なかったからだ。

「これがドね。その次がレ、ミファソラシド…」

と楽譜を開いたピアノの前でピアノの音を鳴らしながら教えてくれた記憶がありますが、私の頭の中でその記号を音として記憶する事は出来なかった。

そのため、譜読みというのが一人でできなかったので、部活の後に残って他の子が歌ってくれたのを、聴いて、真似する。という覚え方になった。

私一人の為に一緒に残ってくれた皆様、今でも感謝しています。


音楽が大好きで、無くてはならないのに、音楽を理解する事が出来ない悲しい現実。

でも、それで良い。

理論だとか技術だとか、知識で音楽を聴くよりも、自分の、好きとか、心地いい音楽があれば、それで良いと思っていた。


なのに、思い付いた様に、歌を歌いたくなった。

その心の隙間に入り込んだのは、

SNS の広告。歌手になりたい人募集。

騙されているのも半分分かっていたのだが、

乗っかってしまった。バカだなー。

好奇心に負けた。アホだなー。

そして半年の育成コースを受ける事になった。

高かったなー。授業料。

コロナ禍だったので、レッスンは主にzoom。

何だかよく分からん内にその半年が過ぎて、

私はもう歌なんて歌わなくていいや。

と思った。

育成コースのレッスンが何とも価値の無いものだったからだ。

音楽についての座学的なのは良かったのだが、歌のレッスンが、レッスンをする先生らしき人達に何の魅力も無かった。これは致命的だった。

あーまたつまらん事にお金を捨ててしまった。

そんな後悔がぐるぐるしていた、そんな時に、

おいでー、と呼ばれて行ったジャズ喫茶n。

ピアノとベースとヴォーカルのトリオ。

圧倒的だった。

この人が、答えを持っている。

直感が閃めく。

この人から歌を学びたい。

そう思った。

でも、どうやって??

と思っていた所に、オンラインでもレッスンしてるらしいよ。との情報が耳に入る。

Facebookでヴォーカリストの方を探して、ダイレクトメールを送った。

そして、私の歌のレッスンがはじまった。


ゼロスタート、と言いたいが、なんならマイナススタートのレッスンだ。

初日は座学の様なもので、師匠がこのレッスンの方向性はこうです。と言った説明だった。

初めて聴く事ばかり。

師匠の言っている事全て意味がわからない。

なのに、私の心の中では、

やはりこの人が答えを持っている。という、

直感的希望から、確信に変わって行った。


さぁ、まずは体操から。

その次は呼吸。

それから声を出していきましょう。

1時間半のレッスンの最後の10分くらいに、

では歌詞を読みましょう。

一語一語の発音、それからワンフレーズの発音から流れ、全体としての英語のリズムなど、を教えてもらったあと、歌ってみましょう。


これが、私の受けているレッスン。

どう思うかは人それぞれだけど、

私は、自分に必要なものが全部詰まっている。

と思った。

最初の変化は呼吸だった。

パニックなどに陥った時、私はまず、呼吸が難しくなる。

呼吸ってどうやるんだった?

わからない。

苦しい。

その後はなんとかお薬の存在を思い出して探して、お薬を飲んで、聞き始めて、落ち着くまで耐える。その繰り返しだったのが、

苦しい。

の後に、レッスンを録音したボイスメモを再生。

師匠のカウントする声に合わせて呼吸をする。

そうすると、だんだん落ち着いて、気付いたら眠れていた。

という事ができる様になった。

それは本当に大きな変化だった。

ひどい時はもちろんお薬はまだ必要だけれど、

呼吸出来ない心の混乱の中、冷静に、

よし、混乱してるな、お薬飲もう。

と考える余裕などなく、お薬を飲むために水を用意して、お薬を置いている所まで行くのはなかなかの高い壁だった。

その間に、まず呼吸を整える。

が入っただけで、快方への道が開いた。


段々と、自分の思考と生活が明るくなっていく事にとてつもない希望がうまれたのだ。

私にとって、とても大きく勇気と根気を求められる決断だった。勿論レッスン料もかかる(が私は月イチなのでそんなに高く無い)

だけど、やはり。

直感は正しかった。

自信を持って言い切れる。

未だコードや、キー、なんとかマイナー、リットなど音楽用語や意味はイマイチわからないのだけれど。まあ、いつかわかる日がくるといいな。


そうそう、私の唯一のいい所は、素直なところ。

と、師匠は言う。

まぁ、他に良い所が見つからないと言うのが、現実なんだろう。声が特別良いわけでも、歌が上手いわけでも、そもそも、私はこんな歌をこうやって歌いたいという意思の様なものがない。

言われた通りができる様に努力するだけだった。

最近は、歌詞に対して、自分の感じ方や、コンセプトを考える様になってきた。


歌をどういうスタンスで歌うのか。が大事だね。


師匠の言う通り、自分だけのスタンスが最近は少し見えて来始めた。

私は自分をヴォーカリストだとは思ってないし、主張もしていない。

もしかしたら師匠に失礼なのかなと、思ったりもするけど、師匠はその辺も見抜いている気がする。


歌わない。しゃべるの。

その歌詞を英語で自然と喋る事ができたら、それが歌になる。

俳優さんの様に他の誰かにならなくて良い。

自分のままで自分のスタンスで喋ればいいの。


ここで私の場合、自分のままとは?という疑問が、発生するのだが、4年目に突入した今年。

少し見えてきた。

今まで生きてきた、今ここに生きている自分の、そのまま。難しく考えなくても、良いのだ。








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