第4話 髪の長い女子

 既にオリエンテーリングが終わったとかで、これからバーベキューだった。バーベキューに合流できたから良しとしよう。

 蚊取り線香も焚いたし、煙の方にはブヨも来ないようで、念のため長袖は着ていたものの、それほど虫の恐怖には苛(さいな)まれずに食事を楽しんだ。

 合宿メンバーは30人くらいいた。普段のサークルでは作ったゲームを発表したり、そのゲームで遊んだりしているが、ここではコンピューターは一切なし。各部屋でボードゲームやマージャンをして遊んだ。ま、ここにはWi-Fiもないしな。

 翌日は雨だった。この辺りには夏にグラススキーが出来る施設があり、そこら辺へバスで出かけた。だが、雨なのでグラススキーはできず。アウトドア施設の中をウロウロして過ごした。お土産を買ったり。

 夕飯を済ませる頃には雨が止んだ。バスでまた宿に戻り、予定通りキャンプファイヤーをすることになった。

 火を見ると、非日常感がすごい。最初は薄暗い程度だった空も、いつの間にかすっかり暗くなった。そうすると、火の傍は明るいものの、少し火から離れると真っ暗で、人の顔も識別できなかった。

 缶の飲み物を好きに取り、何となく火を囲んで飲んだ。ビールだったり、チューハイだったり、ノンアルだったり。俺はレモンサワーを飲んだ。

「よーし、それじゃあフォークダンスやろうぜー。」

誰かが言って、音楽をかけた。オクラホマミキサー?何となく踊れそうなやつ。

「えー、圧倒的に男子の方が多いんですけどー。」

誰かが言う。そして笑いが起こる。

「男同士でも何でもいい!アハハ!」

酔いも回り、まあ相手なんて誰でもいいと思っているところへ、

「ねえ、一緒に踊らない?」

背中をつんつんと突かれ、そんな声を掛けられた。振り向くと、女子だった。まだあまり女子と仲良くなっていなかったので、顔は分からない。というか、火から少し遠くて、前髪の陰で顔があまりよく見えない。だが、髪の毛がすごく長い子だった。胸よりも下の方まである。

「あ、うん。もちろんいいよ。」

女子が少ない中で、選んでもらえてありがたい。俺がいいと言うと、その女子はすっと腕を組んできた。髪が腕に当たり、ひんやりした。輪の中に入り、適当に前の人に合わせてオクラホマミキサーを踊り始めると、髪の長い女子は次の人に代わる前にぐいっと俺を輪から外れる方向へと引っ張った。

「ねえ和馬くん、私と仲良くしようよ。」

とっとっと、とよろけながら彼女に引っ張られて移動した。また火から離れたので顔がよく見えない。

「ね?仲良くしよう?」

彼女は更に暗い方へと引っ張ろうとする。そこへ、

「和馬、どうした?」

友達に呼ばれた。呼ばれた方に振り向き、再び彼女の方を振り返ると、もう彼女はいなかった。あらら、チャンスを逃しちゃったかな?

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