第3話 スキー場を逆走?

 駅から宿まで、地図の上では3㎞だった。3㎞なら余裕で歩けると思った。だが、地図上で見る道と、実際に現場で見た道とは、全く印象が違った。すげえ、上り坂。

 雪のシーズンにはスキー場になるこの辺り。一本道しかないのだが、それはつまりスキーのコースだ。そのスキーコースを上る事になる。

 とにかく歩くしかない。スーツケースを引っ張って歩いて行った。最初は駅や家などが並んでいたが、少し行くともう、道の脇は森。うわっ、でっかい蚊が!……と思ったら、あっちにもこっちにも、ブーンという音もすごい。これは何だ?蚊なのか?でかすぎるだろ!

 とにかく半袖で歩いたらどれだけ刺されるか分からないので、リュックから長袖を引っ張り出して着た。確か蚊って黒い物に寄って来るんじゃなかったっけ?今俺、Tシャツも長袖の上着も黒だよ~。って、どうせ俺しか動く物はいないわけだし、何色着てても寄って来るか。

 長袖を着たら一気に歩き出した。止まったら思いっきりたかられそうだから、止まるわけにはいかない。暑いし、スーツケースを引っ張っての坂はきついし、もう汗だく。くっそー、もっと急ぎたいのにスピードが出ねえ。

 そうやって、ブーンという音に急き立てられ、泣きそうになりながら必死に歩いた事30分。ようやく宿が見えてきた。

「おーい!」

思わず声を上げた。

「あ、和馬じゃん?おー、来たかー。」

初対面のような、そうでないような仲間たちが出迎えてくれた。

「もうさ、でっかい蚊がいっぱいたかって来てさ。」

ゼエゼエしながら言うと、

「あれブヨだよ。この辺にもいるぜ。ほら。」

「人間の血を吸うらしいよ。」

ブヨだったのか。怖え。

 しかし、何とか日が暮れる前に到着できた。これで日が暮れて真っ暗になったら終わりだったぜ。

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