予測不能の換気扇

彩霞

予測不能の換気扇

 我が家の洗面所には、内蓋うちぶたが付いた換気扇がある。


 蓋付きの換気扇にしたのは、頻繁に使うわけではないので、ほこりが被らないようにという配慮があってのことだ。


 その内蓋は、開閉式になっている。

 下部が蝶番ちょうつがいのようになっていて、スイッチを入れるとそこを支点にパカっと開く。まるで二枚貝が開くがごとくである。


 ただし、大きくは開かない。


 よく言えば上品に、悪く言えば申し訳程度にちょこっとだけ開く。それでも換気はされるのだから、その程度でよいのだろうと思う。


 さて、その内蓋付きの換気扇であるが、設置されたばかりのときは、想定した以上に使わなかった。


 というのも、換気扇を止めるためにスイッチを切ると、一瞬でこの蓋が閉まるのである。しかもその際、「バァッン!」と大きい音が出る。例えるなら、乱暴に窓を閉めたときのような音だ。


「商品化するときに、もうちょっと何とかならんかったんか……」と思うのだが、使う側として選んでしまったわけだし、こういうことは設置してみなければ分からないこともあるので、仕方ないと割り切る。


 ただ、やっぱり蓋が閉まるときの音がうるさいので、「まあ、使わなくてもいいか……」と放置していた。


 しかし、三年くらい前、近年の猛暑で「さすがに換気扇を回しておいたほうがいいんじゃないか」という状況になった。


「仕方ない……」と思って使い始めてみると、中々いい感じである。「設置してあってよかった」とさえ思ったのだが、このあと事件が起こった。


 換気扇を止めようと思って、「あのうるさい音がするんだろうな」と心構えをしてスイッチを切ったのだが、蓋が閉まらないのである。「バァッン!」とならない。


「え、もしかして使わない時間が長すぎて蓋が閉まらなくなった? えー、閉まってくれよぉ。閉まらないとほこりが入って面倒なんですけど……」と思い、天井近くの壁に設置してある換気扇を、その辺にあったほうきの部分で突いてみる。

 しかし、思った以上に蓋は頑丈で、力を入れて押してみてもびくともしない。


 あまりにしっかりとしていたため、「こんなに丈夫なんだなぁ……」と呑気のんきに思っていたときだった。


 急に「バァッン!」と閉まったのである。時間差の動きに、私はびっくりしてしまって「うわぁ!」と声を出してしまったほどである。


 もしかするとしばらく使っていなかったので、スイッチを切ったのと同時に閉まらなかったのかもしれないと思った。


 しかし、久しぶりに使ったので、次は大丈夫だろうと思っていた。

 つまり、スイッチを切ったらすぐに「バァッン!」と閉まるだろうと思っていたのだ。……が、そうはならなかった。


 再び使うと、前回同様中々閉まってくれない。「また帚の柄で突いてみるか……?」と思っていそいそ準備をする。すると突然「バァッン!」と閉まった。

 またびっくりして、ついでに「何だよ、閉まるんじゃないか!」と換気扇に悪態をついてしまったくらいである。


 だが、人は学習するものである。


「きっと何かの不具合が起きていて、すぐに閉まらなくなってしまっているのだろう。だから、この換気扇は時間差で閉まるんだ」と学んだ私は、「次こそは驚くまい。ふふふ……」と思って、次の機会に備える。

 だが、いざ次のタイミングが来るとあっけなく予測は裏切られた。というのも、スイッチを切った瞬間に「バァッン!」と蓋が閉まったからである。またまた私は「うわぁ!」と驚いてしまった。


「え……、調子よくなったの……?」


 そう思ったので、試しにもう一度スイッチを入れて、すぐに切ってみた。

 だが、今度は閉まらない。


「はい……?」


 意味が分からん。


 それから、換気扇の「蓋が閉まるタイミング」と原因を調べる日々が始まった。


 しかし、調べてみて分かったのは、一筋縄ではいかなかったということだけである。


 というのも、蓋の閉まるタイミングのレパートリーが使うたびに増えたからである。


 すぐに蓋が閉まったと思っても、次の日は時間差で閉まる。

 しかもその時間差も日が経つにつれて1分後だったり、3分後だったり、5分後だったり、15分後だったり、長いと忘れたころに閉まったりする。


 こんな状況なので「すぐに閉まらないんだ」と思って油断をしていると、スイッチを切った途端に「バァッン!」と閉まる。


 さらに観察を試みたが、これまで集めたデータを見ても共通している部分が一つもない。

「暑い日だから」「寒い日だから」というのも関係ないし、湿度が高いから、低いからも関係ない。稼働時間も全く関係ない。

「暑い日で長い時間動かしたから」というかけ合わせの問題かとも思ったが、それも関係なかった。


 これこそ「予測不能」である。


 しかし、家電製品というのは比較的予測できやすいものであろう。それがここまでよく分からないというのも珍しい。

 最近では諦めて、スイッチを切ったときに「バァッン!」と閉まらなかったら放置することにしている。もう、知らんわい。


 ……とまあ、こんな感じで、使うたびにより一層性格(?)が掴めなくなっていく、我が家の蓋付きの換気扇なのだった。


(完)

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