22 作戦会議2(勇者×藤倉賢者) 日原ダンジョンと怪異の繭 玉藻の戦闘禁止命令(フォトイラスト)
「じゃあ次はモンスターについて検討しようか」
藤倉が剣奈を見て、さも優し気に言った。心の中では……
(勝ち取るんだ!俺のターン!)
と、一人ナニカに対抗心を燃やしていた。
「うん!」
しっかりと剣奈はつられていた!
「まず剣奈ちゃんの集めた情報をもとに考えてみよう」
さすが藤倉である。そう言えば、剣奈が大喜びするのを見越して、剣奈の手柄を重んじる発言をしたのである。
「うん!そのために、いっぱい情報を集めたんだよ。えへへへへ」
剣奈はすっかり乗せられていた。
「剣奈ちゃんの情報に基づくと……異世界(幽世)に転移するのはオガミ所かな?」藤倉が尋ねた。
「うん!あそこはとっても神秘的な場所だった。水脈の聖地なんだ。そして人もあまりいない。だから異世界に向かうには最適だと思う!」
「なるほど。ではそこで異世界に転移してダンジョンに戻るか。少し距離があるんだろ?」
「大丈夫。異世界だったら剣気で身体強化すればあっという間だよ」
「確かに!」
藤倉が大きくうなづいた。剣奈はどや顔でにこにこしていた。
「玲奈ちゃんの手掛かりを探すなら三途の川と地獄谷、あと死出の山だね」
「うん。ボクもそんな気がしてた。地獄谷は闇坂村で玲奈姉が「篠の道」に入った場所と似てるらしいし。タダちゃは見たんでしょ?闇坂村で……」
「そうだね。闇坂村の廃墟、神社の跡地。そこに棺があって……玲奈の魂が引っ張り込まれたんだ」
藤倉が当時を思い出して悲痛な顔を見せた。一緒にいた玉藻も眉根を寄せて心配そうな表情になった。
◆死出の山 剣奈&玉藻&白蛇
https://kakuyomu.jp/users/SummerWind/news/822139836635017376
「三途の川も探索ポイントだね」
「うん。あそこはたくさんの世界が重なり合ってるかもって、みんな言ってて。「篠の道」ってたくさんの世界の端っこがギュって固く結ばれてるところなんでしょ?だから三途の川から「篠の道」につながってる気がするって……」
「そうだね。ん?どうしたの剣奈ちゃん?」
剣奈がすごくつらそうな顔をして下を向いていた。泣きそうだった。
「あのね。「篠の道」を通る時、縛られちゃうんだ……腕も後ろにギュっとされて、縄がきつく胸に何重にもぐるぐる巻かれて……それと背中とお腹が焼けるように痛いんだ……」
「篠が生贄にされた時の「悲痛な思い」それが空間を固く結びつけておるでの。人はその「生贄におうた時の篠、その身体」に魂を乗せて位相を通過するのじゃよ」白蛇がつらそうに言った。
「そか。しろちゃ。篠さんが生贄にされるとき、実際に見てたんだよね」
「うむ。妾は生贄なんぞ望んでおらぬというのに。勝手に妾を崇め奉り、いらぬというのに無理やり人身御供を押し付けてきたのじゃ。篠は無駄死にじゃ……」
「自分の献身を踏みにじられて。喜んだ新しい命も踏みつぶされて。自分はぐるぐる巻きに縛られて。石を括り付けられて。槍で背中から突き通されて。最後は水にドボンだもんね。辛すぎるよ。でも……「篠の道」を通る時、それ……全部体験させられるんだよ……リアルVRだよ……」剣奈が泣きそうになって言った。
「じゃあ今回は「篠の道」は通らず、手掛かり発見までをゴールにしようか?」
藤倉が提案した。
「ううん。いい。玲奈姉が見つかるなら……ボク、縛られても……、痛くても……、槍で貫かれてお腹が死ぬほど痛くても……、息が出来なくて苦しくても……、頑張るよ……」
剣奈が前を向いて言った。しかし……剣奈の眼には涙がたまっていた。
「「篠の道」を通らなくても異世界移転できないものかな?例えば現世と幽世、この世界と異世界は祝詞を唱えるだけで行き来できるよね。そんな風にできれば……」
「うん。そうできればボクも嬉しい……」剣奈がポツリとつぶやいた。
藤倉がつらそうな剣奈を見て、話題転換すべきだと判断した。
「さてと……、じゃあ次にダンジョンモンスターとの闘いの検討に入ろう」
藤倉が剣人ワールド、剣人語に合わせて言った。
「うん!とっても大事な検討だよね!」
剣奈が目をキラキラ輝かせていった。「篠の道」のことはすっかり頭から飛んでいた。
「モンスターに関連しそうなのは……、ガマ石、獅子岩、縁結び観音様、金剛杖、白衣観音様、それに落人伝説、さらに役行者や空海への信仰心も……「怪異の繭」として邪気に利用されるかもしれないと思うんだ」
重々しく藤倉が言った。
「つまり……ラスボス級との闘いになりかねないってこと?」
「そのとおりだよ。あ、それと忘れてた。「龍」が出るかもしれない!」
「えええええええ!?なんで?」
「日原ダンジョンは水脈、地脈と深い縁がある。つまり人々の水や大地への信仰心、巨岩への信仰心、それらが「土龍」や「水龍」を生む可能性は否定しきれない気がするんだよ」藤倉が静かに言った。
「わかったよ。あと、ボクからも大切なことを言わないといけないんだ」
「なんだい?」
「きゅうちゃ、今回はきゅうちゃは周りに敵が来たとき、魔力を使わずに迎撃して欲しいんだ」
「あら?なぜですの?」玉藻が不思議そうに尋ねた。
「きゅうちゃの攻撃は素晴らしい。とてつもない威力がある。すべてを斬り裂く「蒼三日月刃」(真空妖力刃)、広域の敵を薙ぎ払う「阿修羅舞い」(真空妖力刃の乱れ撃ち)、そしてすべてをせん滅する「
「え、ええ、まあ……」
「でも……強力すぎるんだ……それが今回は仇になるんだ」
「あら?強力だといいのじゃないのかしら?」
「山木賢者から今回はダンジョン破壊は慎んでほしいとの要望があったよね」
「ええ。そうね」
「きゅうちゃ……正直に言って?手加減……苦手だよね?」
玉藻が目をそらした。
先日も全く力を入れずに振り払ったはずの手が大男を吹っ飛ばすほどの威力を生んでしまったのを思い出したのだ。
ちなみに玉藻のSNS大炎上は藤倉、山木、千剣破、そして千鶴(剣奈の祖母)には知れ渡っていた。彼らは巧みに剣奈の気をダンジョン探索にそらして炎上事件を知らせない様にしていた。
不思議なことにすぐに玉藻映像は公開されると即座にアカウントがバン(アカウント停止、凍結、アカウント削除処置)されるようになった。
鍵アカウントや非公開アカウントでの公開、インストのストーリー限定投稿などもバン対象となった。テキストだけの投稿、コメントですらバンされると噂になった。
人々は妖女の呪いであるとささやき合った。みな書き込みをためらうようになった。誰もそのことに言及しなくなった。
炎上はアッという間に鎮火されたのである。内調、獅子奮迅努力のたまものである。
作戦会議は千剣破が怒って強制的に終了させるまで延々と続いた。内閣情報調査室・第二分析室がまたも大パニックのお祭り騒ぎになっていたことは言うまでもなかろう……。
――――――
「篠の道」:全年齢対象の『はるだん』では詳しく書けません。詳細に興味がおありであれば『赤い女の幽霊:二章』「2-1 高手後手胸縄縛 緊縛され水牢に沈む女 背後の声 に振り返ってはならぬ」をお読みください。でも……かなりえぐいです。
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