第2話 転生ワナビ達 ②

 朝食を済ませに食堂に向かう。席は決まって窓と反対側の端だ。ここなら寄ってくるもの好きも少ない。


 級友と優雅な食事を楽しんでいると、その物好きたちがやってきた。話しかけてくるわけでもない、遠巻きにこちらを眺めているだけだ。その視線がたまらなくうっとおしい。

 嘲笑を孕んだその視線は俺だけでなく級友にも向けられている。仲間外れを作って喜んでいる幼稚さが神経に障った。


「顔、怖いよ。」


 俺の気を察してか級友がたしなめる。そうかな?そうかもな。


 今日は訓練施設で各々のスキルを使った実習がある。数人でツルんでこちらを見ているあたり、大方俺たちを実験台にしようという腹だろう。実に都合が良いはなしだ。


 朝食を終え、今日の講義へ向かった。


 予想通りと言えばいいのか、実習が始まるや否や、俺と級友は5人の男たちに囲まれた。

 今朝、食堂でこちらを遠巻きに眺めていた連中だ。


 今日の実習は転生後の肉体に慣れるよう、スキルなしの模擬戦闘だ。確かに、現代社会では引きこもりでなくとも運動習慣がある方が稀だ。特に飛んだり跳ねたりすることはほぼ無いといっていい。

 いくら強靭な肉体を得たとしても、その使い方がわからなければ意味がないということだ。


 理には適っている。が、俺のように他に体格で劣るものはどうだろう。級友のような場合、性差はあるのだろうか。

 検証してみたいことは多いが、それには被検体は多い方が良い。わざわざ絡みに来てくれた彼らは非常に都合が良い。


「また二人きりでイチャイチャと、お前らデキてんのか?ホモ野郎ども。」

 一人が周りに聞こえるよう、大声で俺たちを嘲笑する。他の男たちも一斉に笑った。


 集団で気が大きくなっているのがわかる。典型的な少数派排斥の構図だ。


 こちらが何を話すでなくとも男たちの罵倒が続く。よく次から次へと言葉が出てくるものだと感心してしまう。

 明確な攻撃だ。こちらが何をするでもなく向こうから仕掛けてくれたことに感謝しつつ、ここはひとつ大きく笑うことにした。


「いやいや、関心するよ。よくもまぁ、そこまでつらつらと罵詈雑言が出てくるものだ。」

 腹を抱えて時折エヅきながら笑う少年の姿に男たちがたじろぐ。

 実際不気味だろう。ペースがこちらに傾くのを感じとりつつ俺はつづけた。


「ホモだなんだとおぉ、キショイキショイ。生きていた頃はずっと言われ続けて来たんだろうな、可哀そうに。」

 どうやら当たりらしい。先ほどまで威勢の良かった男の顔がみるみる赤くなっていった。


「てんめ、この野郎。」

 男は図星を疲れて思わず手を出した。


 感情に任せた大振りの拳を避けるのは容易かったが、感謝の意を込めていたくない程度に頬にかすらせた。


 これで理由ができた。戦闘開始だ。

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