第8章 致命的な花純のやらかし

言葉が通じるとわかった後。

私はパソコンの小さな画面を食い入るように見つめていた。

……ニナの無事を確認するために。

正直私の心臓はバクバクで今にも飛び出そうだ。

時々、今もニナと繋がっている電話口からは悲鳴のようなものが聞こえてくる。

どうか、どうか現場にいる人が全員助かりますように。

私は祈りのような気持ちを込めて窓の外を見つめた。

遠くからは幼い子供のはしゃぐ声が聞こえてくる。

と、そのとき。

私は「あっ。」と小さな声をあげた。

それと同時に電話口で「ドサドサドサッ。」と響いてくる。

ニナがパニックになった人々とぶつかって転んだんだ。

そして、ニナはそれと同時に出口を見失ってしまったのか、周りをキョロキョロと見回す。

ニナ!そこは右に行けば出口に……。

私はパソコンの映像を見ながら呟く。

と、また犯人がバンバンッと発砲する音が聞こえた。

しかも、どんどんその音が近づいてくる?

あたりには一層と緊張感が走る。

やばい!時間がないっ!

私は半ばパニックになりながら、ふと思いついた。

そうだ!

私は映像を見てて出口の場所がわかってるんだから、ニナに電話で伝えればいいじゃん!

えっと、今ニナのいる場所なら出口は……左だっ!

私が映像を睨んで考える。

早く伝えないと……!

犯人と鉢合わせになっちゃう!

……左、ひだり。

えーっと、左って英語でなんだっけ?

「ライト(右)」?「レフト(左)」?

普段からちゃんと英語の勉強をしてないからわからないっ!

私は焦る気持ちを抑えながら必死に考える。

調べたいのに、英語を検索欄に打ち込めない……!

こんなことになるならちゃんと勉強しとけばよかった。

確か、確か左は「ライト」だっけ……。

いや、「レフト」……?

私は遠い記憶を引っ張り出しながら呟く。

と、そのとき画面を見つめて、小さな悲鳴をあげた。

まずいっ!画面の端っこにもう犯人が写ってる。

私はその映像を見て、耐えきれなくなって叫んだ。

「ニナっ!だよ!」

正直、焦りと不安で自分が何を言っているかもわからない。

私の英語は合ってたかな?

でも、今の私にそこまで考える余裕はなかった。

……けれど。

この英語が最悪の状況を招くことになるなんて……。

まだ私は気づいていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る