第7章 ニナの今
電話口で大きな音とたくさんの人の悲鳴を聞いたあと。
私はいても立ってもいられなくてパソコンを開いた。
何かネットで手がかりになる情報がないかなって思ったから。
電話はまだつながったまま。
でも、相変わらずニナからの返事はない。
聞こえてくるのは異変を感じさせるたくさんの人の悲鳴だ。
恐怖がひしひしと伝わってくる。
……今、本当にニナのいる場所で何が起こってるの?
ニナは無事?
私は不安でおし潰されそうになりながら、情報を探した。
けれど、第一、今英語がない世界なわけで。
ネット上には日本のニュースばかりがのっている。
「ない!!!情報が、何もない!」
私は焦りに駆られながら、必死になって探す。
と、そのときふと画面の右上に写っている画像に目がいった。
その画像の下には訳のわからない文字が載っている。
……なんだろう、これ?
読めない文字だけど、なぜだかすごく惹かれる。
まるで、何かに呼ばれたようだった。
私は導かれるようにその画像をクリックする。
すると。
パッと画面が切り替わり、何かのライブ映像を映し出した。
音声はないみたいだ。
ん?どこだろう、これ?ショッピングセンター?
立ち並ぶお店の看板のようなものには、ついさっきと同じような文字が並んでいる。
私は何のライブ映像かを確認するために、画面に顔を近づけた。
と、一瞬だけ映った映像に私は目が釘付けになる。
…………ニナ!!!!
これ、もしかしてニナがいる場所をライブで映してくれてる映像?
周りではたくさんの人が悲鳴をあげながら、走って出口を目指している。
どうやら映像では現地の人が何かから必死に逃げているようだ。
何これ……。どういうこと?
私は現地の異様な雰囲気に圧倒される。
そのとき。
またバンっと大きな音が電話口から響いた。
私は食い入るように画面を見つめる。
そして、その音の原因に気づいて青ざめた。
なんとついさっきから響いている大きな音は銃声だったんだ。
つまり、みんなはこの銃を持つ犯人から逃げているということ。
私は何が起こっているのかをようやく理解して、映像の中からニナの姿を探そうとする。
と、ここで急に電話口でニナの声が響いた。
「〇△……♡……!」「……%#@……。」
それと同時に、映像の中でもニナの姿を見つける。
相変わらずニナが話していることはわからないけど。
どうやら声の様子と映像からして、ニナはパニックを起こしているようだ。
そりゃ、そうだよ。見てる私でも怖いのに。
私は通じるかわからないなと思いつつ、電話口に向かってニナの名前を呼び続ける。
ちょっとでもニナが落ち着けたらいいなと思って。
すると。
しばらくして、少し落ち着いた声で返事のようなものが返ってきた。
うん?もしかして。
私には聞こえてくる言葉がわからないけど、私の話してる英語は通じてる?
私はためしに「ニナ!」と電話口に向かって話す。
そうすると、少し間が空いた後に「△〇*……!」と返事のようなものが返ってくる。
やっぱり、私の英語はニナに通じてるんだ!
そのことがわかって心が少し明るくなる。
けれど、映像を見つめながら強く握りしめていた私の手は小さく震えていた。
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