511号室―早乙女

「なんでこんな時間に―――」

ヒュ、と喉がひきつる。ドアが何かに突っかかったような気がして覗き込むと、女が血を流して死んでいた。

だが問題はそこではない。目の前には包丁を持った男がいる。目深にフードを被っていて顔は見えず、うずくまって何かを拾い上げている。

「……ぁ、それ……」

俺が捨てたはずの鍵と漫画だ。近くに転がっているのは、椅子の脚だろうか。

―――なんで、なんでこの女が持っている。ちゃんと捨てたはずだ、誰にもバレないよう。

俺が動揺しているのを知ってか知らずか、男は立ち上がる。その動作によってフードが取れるのを見て、俺は咄嗟に後ろのドアノブを捻った。

ガチャ

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