612号室―齋藤
キャハハ!キャッキャッ!
騒がしい。部屋を移動した途端、耳に赤ん坊の声が飛び込んできた。
誰かが俺を閉じ込めて楽しんでいるに違いない。流石に永遠に続くわけではないだろうから、こんな部屋もさっさと―――ベビーベッドに赤ん坊がいる。侵入者がいるのも気にせず、耳に触る声で笑っている。
……それよりも鍵だ。早くしないと今度こそドアを破られる。しかし、今回の部屋は先程とは真逆の、殺風景な部屋。すぐ見つかるだろう。棚とベッド、机ぐらいしかない。
机に向かうと、仲睦まじい様子の夫婦とその子供の写真が目に入る。今度は全く知らない人達だ。俺の知り合いだったヤツらの部屋を順番に通っていると思っていたが、違ったようだ。……引き出しまで調べたが、何も無い。棚だろうか。
ガンガンガンッ
ああ、もう来てしまった。棚も単純な構造のようだが、全く見つからない。先程の引き出しが二重底にでもなっていたのだろうか。それとも―――
キャッキャッ!
ああ煩い。ずっと我慢していたが、もう限界だ。こんな声が聞こえていたら、集中できるものもできないだろう。
ふと顔を横に向けると、鈍く光る塊が目に入る。
―――この煩い声を止ませれば、鍵も見つかるだろうか。1歩、また1歩と近づいても能天気に笑い続ける赤ん坊に、手元の包丁を振り上げる。
グチャッ ガリィ
ピタッと音が止む。そういえば、ベッドも見ないとな。
ベチャッ
―――ガチャ
邪魔なモノを下に退けると、シーツの上に鍵が乗っていた。それを掴んでから振り返ると、先程入ってきたドアが開きそうになっている。
「クソ……」
幸いにも逆側のドアが近かったので、鍵を挿し込む。
ガチャ
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