4.11 私も彼女欲しい

「見てください、これ」

 服を回収して地上に戻った僕ら。まだ人のいない食堂に座って休憩している。

 サクの突き出したスマホの画面には


『今日来てないけど、どうしたの?』

『……ごめん昨日のこと。やっぱり私が悪かった』

『私、ほんとはずっとサクの気持ちに気づいてたら。でも、どう答えればいいか分かんなくて、ずっと気付かない振りしてた』

『だから、戻って来て。今度はちゃんと、サクと向かい合って話すから』

『通話―着信拒否』


「おお、良かったじゃん。仲直り出来そうで」

 結局、彼氏抹殺計画は何も進まず……進まなくて良かった。

 予期せぬ妨害のおかげかも。

「この後、お昼ご飯一緒に食べるんです」

「じゃあ、うちらは三人か」

 サクの隣、僕の向かいにはノコもいた。

 少しやつれて見えるけど、制服を着て髪を整えると普通の高校生だった。

「あの……喜入さん」

 切れ長の目を僕に向ける。

「僕?」

「……私と二人でお昼食べてくれません?」

「二人?」

 それって──さっきから何となく目線が気になってはいたけど、

「私が無用ってこと?」

 自分を指さす風船さん。

「えー、何、あー」

 言うのは野暮とでも言うように、僕とノコを交互に指出す。それから──

「ちょっと待ってよ! 喜入君取られたら、私がぼっちになるじゃん! というか、私喜入君に先越されたくないんだけど! えー、いいなー、私も彼女欲しいなー!」

 僕らしかいない食堂に、風船さんのこねる駄々がこだまする。


 ピンチを救い出され、朦朧とした意識の中、僕に背負われていたノコ。でも、

「今、冷静になっても、喜入君のこと結構タイプ」

 ということらしい。

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