4.5 この電流を受けて見よ
世界でも有数の美顔区域サン・ヒアルロンにて、ミス・サン・ヒアルロンの母とアメフト選手の父との間に生まれた。物心ついたときには、つま先を額に付けて足の裏の魅力を語るという奇行をはじめ、両親を驚かせたという。
すくすくと育った恭子。中学生になる頃には、サン・ヒアルロンでも前例がないほどの美しさを纏っていた。芸能界からのオファーはもちろん、神々からも求婚の申し入れがあったがすべて断った。
何故なら恭子には夢があったからだ。いつかこの街を出て、世界一の教師になる ──恭子がそんな夢を抱いたキッカケは、美顔島ディストピア中学のエース教官、チョッピー・オチョプの師事を受けてからだった。
チョッピーはクラスを受け持っていなかったし、どの教科も担当していなかったが、知る人ぞ知る名教官だった。学校の地下深く、エリア・アンダーグランドに行けば会うことが出来た。偶然、落とし穴に落ちた恭子が辿り着いたのは、まさしく、チョッピーの教務室だった。
「おい、小娘。この電流を受けて見ろ」
転がり落ちてきた恭子の身体に、オチョプは突然電流を流した。
「ぐああぁ!!」
恭子の苦悶の声が上がる。
「中々に腕がいいな」
何の腕が良いのかは分からないが、電流に耐えていると
「き、気持ちいい……!」
今まで体を貫いていた痛みが徐々に快感に変わっていくのを感じた。
「この快感を教わるために、私はこの部屋に導かれ、そして教官は電流を流してくれたのですね」
初めての感覚を知った恭子は、同級生にもこの快感を味合わせたげたいと思った。そして、AEDにも似た電流器をチョッピーから受け取ると、地上へと戻っていった。
それから同級生たちに手当たり次第に電流を流していく恭子。見る側も惚れ惚れするような笑みを浮かべながら、生身の人間がギリギリ耐えられるぐらいの電流を流す様から、『ビリビリ・ギリー』という通り名がついた。
学校外にもビリビリの魅力を広めようと街に繰り出し、道行く人々に電流を流した。ある学校に来た保安官が、彼女の身柄を拘束したことは言うまでもない。
留置所に連れていかれた恭子は、電流器を没収され、牢屋に入れられた。この牢屋と言うのは、鉄格子で囲まれたタイプではなく、大きなスライムの塊に身を沈められるタイプの牢屋だった。
「おぼぼぼ……」
スライムの中で気泡を揚げながら、牢屋の外を見る恭子。
いったいどうしてこんなことになってしまったのだろう。自分はビリビリの快感を教えていただけなのに。
「おぼぼぼ……」
恭子に近づいてくる影があった。同じ牢屋の囚人、スライム・ウーマンであった。彼女は道行く人々の口にスライムを詰め、快感を与えていたところ捕まった女だった。スライム・ウーマンと恭子はすぐに仲良くなり、夜な夜な互いの夢を狩り合った。
退屈な獄中生活に彩りを与えてくれる存在だった。二人が一時、そういう仲だったことも言うまでもない。言ったら、口にスライムを詰め込まれてしまう。
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