3.11 押し付けて来ないで
「貴方のご友人は大変、気持ちよさそうになさっています」
向かいのペアにチラッと視線を送る。
「乳首もほら、あんなにパンパンになっている」
「実況しないで」
「脚を透明な粘液が伝っているようにも見えます」
「わざと意地悪してますか?」
「ご友人の下準備を担当している私の同僚は、ここに来る前、アパレルショップで服を売っていました」
「それはどういう誘惑ですか?」
「その人の生い立ちや普段の様子を知った方が、興奮しませんか? 名前も知らない相手と肌を重ねるのも良い物ですが、それは少し愛がない」
「僕は、今のあなたより一分前ぐらいのあなたの方が好きでした」
「喋らない方が可愛いねって、良く言われます」
「僕の友人と気が合いそうですね」
「大抵誰でも、中身を知ってしまえば大したことありません。幻想を抱く予知など消えてしまえば。私にとって今のあなたは、可愛げのある男子ですが、友人たちとの会話や家での様子を知れば失望するかも。逆に好感が増すとしたら、貴方は私の運命の人です。婚約しましょう」
「ごめんなさい」
「仮定の話です」
「……これ何の待ち時間なんですか?」
もう風船さん洗浄も終わって、向こうの女性もじっと立っている。
「下準備は済んだんですが、調理担当の者が買い出しに出てていないんです。そろそろ帰ってくると思うのですが。あと、あなたのソレが収まってくれるのを待っています……いつまで興奮してるんです?」
「手を解いてくれれば、自分で何とかしますよ」
縛り上げられた僕の手をちらっと見る。
「貴方みたいな初心な方はなかなか収まらないかもしれませんね……いいでしょう、出してしまうのが手っ取り早い」
拘束台のレバーを降ろすと、ブラついていた足が地面を踏んだ。
「この部屋には外側から鍵がかかっているので、逃げようと思っても無駄ですよ」
「人監禁する用の部屋じゃないですか」
手を伸ばして──体が密着する──縄を解いてくれた。
「ふう」
拘束されていた手首をぷらぷら振る。
「おらぁ!」
拳を思いっきり振り上げる。必死に振り下ろすと頬に当たって、驚く彼女の顔が歪む。
「めっちゃストレートに暴力だ!」
痛そうに頬を押さえながら、うずくまる女性。
「こっちだって、食べられそうなんだから、手段は選べない!」
騒ぎにもう一人の女性が掴みかかってくる。その腹を思いっきり蹴り飛ばして跳ね返す。
腹を押さえて転がる女性。乱れた髪が頬に張り付く。
「暴力の中でも、アウトなタイプの暴力じゃないか……?」
「逃げるよ!」
「こんなことしてまで、助けられたくないよ!」
もがく風船さんの拘束を解く。
「扉って外から鍵かかってるんじゃないの?」
「なら、彼女らを人質にして、出してくれるよう頼もう!」
「最低だ」
台に置かれていたカッターを取る。段ボール用のロープやガムテープ、鋏も置かれている。
「風船さんはこれで彼女の手を縛って」
腹を押さえて倒れた女性は、風船さんに託す。
まだ痛そうに、頬を押さえている女性に詰め寄る。目を見開いて逃げ出したが、狭い倉庫の中だ。すぐ、部屋の隅に追いつめた。
「きゃっ、変態!」
水着の女性に詰め寄る全裸の男。全裸に関して脱がした側が悪い。
もみくちゃになりながら、背面から拘束する。首元にカッターを突きつけると大人しくなった。
「押し付けてくんな!」
彼女の柔らかい体との間に自分の熱を感じる。容易く埋没する様子に、自分の硬さと彼女の柔らかさを感じる。水着のさらさらした生地に擦れる。
「ごめんなさい! これに関しては只々、ごめんなさい!」
何とかガムテープで縛り上げて、場はいったん収まった。
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