炎熱

Nue

炎熱


忌引します昨日わたしが堕胎した別の明日を弔うために


予定表全部に「生きる」入れないとときどき呼吸忘れちゃうから


死にたいと十度唱えて掛け布団真綿で首を絞める真夜中


ひとしきり呪詛の言葉を並べたて冬はまだかと36℃


まぶたの裏に月はなく(狂えない)ままでつぶらなまなこは闇へ


たましいが死んでないのは慣性でいちど血潮が流れたからで


生と死のあいだに振り子が吊り下がるこの振幅は減衰しますか


この夜もこの死にたさも消えないで炎熱だけがわたしの記憶


遺書よりも弔辞を書いておきましょう 生きる葬式。 わたしのための。


夜半に吹く風が温度をなくしたら思い出してよ前の季節を

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炎熱 Nue @nuit__9

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