第3話:屋上で早見さんと楽しくお話をしていく
という事で俺は屋上から出るのを中断して正座をしなおしていくと、早見さんも俺の隣にちょこんと体育座りをしてきた。
(まぁ早見さんが俺の隣に座ってきたという事は、早見さんも俺と話そうとする意思はあるって事だよな?)
流石にこのまま無言状態でお昼休みを過ごすのは辛すぎるので、とりあえず早見さんに他愛無い話を振ってみる事にした。
「え、えぇっと、そういえば早見さんと黒木って幼馴染だったんだよな?」
「そうよ。私の家のお隣さんがユウ君の家だからね。だからユウ君とは物心がつく前からずっと一緒に育ってきたのよ」
「そんな昔から交流があったのか。二人は仲が良いのは知ってたけど、まさか物心がつく前の頃からの付き合いだったとは知らなかったよ」
「えぇ、そうなのよ。それにユウ君とは小中高も全部一緒の学校だったしね。だから小学生の頃とか中学生の頃はユウ君とほぼ毎日一緒に登校したり、家で勉強したりゲームをして遊んだりとかもしてたわ。そんな感じで子供の頃はほぼ毎日ユウ君と一緒に過ごしてきたのよ」
「黒木とは小中高もずっと一緒だったのか。それでほぼ毎日黒木と一緒に過ごしてきたなんて、そりゃあ凄い仲良しになる訳だな。そんだけ長い間毎日一緒に過ごしてきたなら、もうお互いの事は何でも知ってたりしてそうだな」
「でも私の好意だけはちっとも気づいてくれなかったけどね、ふふふ……」
「え? あ……」
他愛無い雑談をしていたはずなのに地雷をブチ抜いてしまった。そのせいで早見さんの目がどす黒い感じになってさらに自虐的な笑みを浮かべ始めていってしまった。
(ま、まずい、早く話を変えなきゃだ……!!)
という事で俺はすぐさま明るい口調になって早見さんにこう言っていった。
「い、いやでも幼馴染がいるなんて凄いよなー! 俺には幼馴染はいないから、早見さんたちみたいな昔から交流のある仲良しの関係性って凄く羨ましいよ!」
「ふぅん、そうなんだ? でも名瀬君にだって幼馴染とはいかなくても、子供の頃から交流の続いている友達とかはいるんじゃないの?」
「いや俺にはそういうのはいないんだよ。俺は親の仕事の都合で子供の頃は引越しする事が多くてさ。だから小学生の頃は友達なんて全然出来なかったんだよ」
「へぇ、そうだったんだ。子供の頃に引越しばかりしてたなんて、何だか名瀬君の家庭は結構大変だったんだね」
「まぁ親が仕事で忙しかったからしょうがない事さ。まぁそんな訳で俺には幼馴染がいないから早見さんたちの関係性が羨ましいなって思ったんだ。あ、でもさ、それだけ長い間一緒にいたらさ、黒木と喧嘩とかはしなかったのか?」
「喧嘩? ううん、ユウ君と喧嘩なんて一度もした事はないわよ。まぁクソ生意気な弟とはしょっちゅうしてるけどね」
「え? あ、そ、そうなんだ。クソ生意気な弟ね……」
早見さんはうんざりとした表情で“クソ生意気な弟”と言い放ってきた。今の早見さんの発言からして多分家族のヒエラルキーは姉>>>>弟なんだろうな。
(それにしても早見さんって……こんなに口悪かったっけか?)
俺の知ってるクラスメイトの早見さんは凄く温厚で優しい女の子だ。人の悪口とか怖い言葉みたいなのは全然使わない女の子だったはずだ。
そんな温厚で優しい女の子が真顔で“クソ”とか“殺す”とか“指折らせろ”とか言うのは何だかギャップ差がありすぎてちょっとだけ混乱してしまいそうになる。
「ま、まぁでも今まで喧嘩をした事がないなんてそれも凄い事だよな。俺だったらそれだけ距離が近すぎる相手だと、嫌な所とかが見えてきて普通に喧嘩しちゃいそうだけどな。早見さんはそれだけ長い期間一緒に居たのに黒木の嫌な所とかは無かったの?」
「はぁ? 嫌いな所なんてあるわけ無いでしょ? ユウ君は誰よりも優しくて、本当に素敵な人なんだからね? 何言ってるのよアナタは?」
「そ、そうか、そりゃそうだよな、すまん……」
そう言って早見さんはジト目で俺の事を思いっきり睨んできた。
まぁ普通に考えて、好きな男子の嫌いな部分が無いかを尋ねるなんてデリカシーが無さすぎだよな。こればっかりは俺が完全に悪いのですぐに謝った。
「ふん。別にいいわよ。まぁそんな訳で私はユウ君の事が子供の頃からずっと大好きだったの。それにユウ君だって私の事を誰よりも信頼してくれていたからさ……だからこのままいずれ近い将来に私とユウ君は恋人同士になると思っていたのに……それなのに……それなのにあの泥棒猫めぇ!」
「い、いや泥棒猫って……」
「いや誰がどう考えても泥棒猫でしょ! だって篠原さんって数ヶ月前に転校してきたばっかりの女の子じゃないの! それに比べて私はユウ君と10年以上も仲良くしてるのよ? 私がユウ君と一番仲が良い女子だっていう自負もあるのよ! それなのに……それなのに何で惚れるの私じゃないのよ!?」
「え、あっ!? ちょ、ちょっと待っ……ぐ、ぐえぇっ!?」
「ねぇ! 教えてよ!! 私じゃなくて篠原さんの一体何処がいいのよ!?」
「ま、待っで……ぐ、ぐるじ……! ギ、ギブギブ……!!」
早見さんはそう言いながら俺の胸倉を思いっきり掴み上げてきた。そしたらそのまま俺の首が見事に絞まりきってしまったので、俺は苦しみながら早見さんの腕を全力でタップした。
「あ、ご、ごめんなさい……」
「ごほっ……ごほっ……べ、別にいいよ……」
なんとか早見さんから解放されたので、俺は咳をしながらも頭の中に篠原さんの顔を思い浮かべてみた。
篠原さんはちょうど半年くらい前に転校してきた女子生徒で、俺達と同じく高校二年生だ。
そして篠原さんの特徴と言えばやっぱり黒髪ロングのサラサラヘアと胸が大き……あぁいや、モデル体型でとても美人なのが特徴的だな。テレビの芸能人とかモデルだと言われてもそうだろうなって信じてしまうくらいの凄い美人さんだ。
でも篠原さんは表情をあまり表に出さない子でも有名だった。そして話しかけてもあまり返答が返ってこないので、ちょっとだけ近寄りがたいオーラがいつも出ていた。
だから転校してきた当初は色々な生徒に話しかけられていたんだけど、今ではそんなクールすぎる篠原さんと話してる生徒は数えられる程度しかいない。
ちなみに今でも篠原さんと話してる生徒の中には、当然だけど世話焼きな主人公気質の黒木も入っている。
とりあえず俺が知ってる篠原さんについての話はそんなところだ。正直俺も篠原さんはクール過ぎるから話しかけた事が無いので、篠原さんの性格まではわからない。
でも性格はわからなくても見た目がメチャクチャ美人なため、男子からの人気は圧倒的に高い。もしも学校でミスコンを開催したとしたら上位入賞する姿が容易に想像出来る。
「そ、それで? 篠原さんのどこが良いと思うの? 男子としての意見を教えてよ!」
「え、えぇっと……まぁやっぱり顔かな?」
「ぐっ……ぐぎぎ……」
「あと胸が大き――」
「あ゛ぁ゛ん゛! ?」
「いや待って!? 怖い怖いって!!」
本当の事を言っただけなのにドチャクソキレられた。いや本当の事を言うべきでは無かったか……でも嘘をつくのもあれだしなぁ……。
「な、何よそれ……! 結局男子って皆……顔と胸なんじゃない……そ、そんなの……どう足掻いても私なんかじゃ勝ち目ないじゃん……」
そういって早見さんはしゅんと落ち込んでいってしまった。俺は急いで早見さんを慰めていく事にした。
「い、いやその……でも早見さんだって十分可愛いよ?」
「ふん。そんな見え透いたお世辞なんか言わなくて良いわよ。名瀬君だってどうせ篠原さんみたいな女子が好きなんでしょ。私みたいな貧乳のチンチクリン女よりも、ああいう美人で綺麗でおっぱいが大きい女子の方が良いんでしょ?」
「いや、俺は早見さんの方が良いと思うけどなぁ」
「ほら、やっぱりね。アナタも篠原さんの方が……って、ふえっ?」
俺は普通な感じでそう言っていくと、落ち込んでいた早見さんはちょっとだけ顔を赤くしながらビックリとし始めていった。
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