第4話:早見さんと連絡先を交換していく
「な、何を言ってるのよ急に!? そんなお世辞なんか言わなくても良いわよ! 私みたいなチンチクリン女よりも篠原さんみたいな綺麗な女の子の方が良いに決まってるでしょ!」
「俺は別にお世辞をそう言った訳じゃないけどな。だってほら、早見さんって凄く優しいじゃん?」
「え? や、やさしい?」
「そうそう。早見さんって授業終わりに黒板を消したり、花瓶に水を入れ替えたりしてるし、先生の手伝いとかも率先してやってるし、勉強で困ってる子に教えたりとかしてるじゃん?」
俺は教室で早見さんが率先してよくやっていた事を列挙して言ってみた。そしてそんな事を思い出してみると、やっぱり早見さんって物凄く優しい女の子だったんだなというのを改めて理解する事が出来た。
まぁでもついさっきまでの早見さんは鬼の形相でヤクザキックをしてきたり、指を折るぞと脅してきたりして滅茶苦茶に怖かったんだけどさ……。
「い、いや、まぁ確かにそんな事は毎日してるけど、でもそんなの別に普通の事でしょ? 皆だって普通にそれくらいするでしょ?」
「いやいや、そんな当たり前なんかじゃないって。どれも率先してやるなんて大変な事だよ。だからクラスの皆もいつも言ってるよ。早見さんは凄く優しい子だって。だから俺もそう思ってるし、そういう早見さんの優しい所は物凄く素敵だなーって思うよ」
「ふえっ!? う、うっ……も、もう! 何真顔になってそんな恥ずかしい事言ってんのよ! 恥ずかしい事を言うの禁止よ禁止っ!」
早見さんは恥ずかしそうにしながら大きな声でそう言っていった。どうやらあまり褒められるのは慣れていない様子だ。そしてそんな大慌てになっている早見さんの様子を眺めていると……。
―― キーンコーンカーンコーン♪
そんな様子を眺めていると昼休みの終わりを知らせるチャイムが聞こえてきた。5分後は午後からの授業が始まってしまうので、そろそろ教室に戻らないとならない。
「は、はぁ、はぁ……ま、全くもう。名瀬君が変な事を言ったせいで全然休む事が出来なかったじゃないの! 私の休憩時間返しなさいよ……!」
「え、俺のせいなのか? いやまぁ俺のせいでも若干あるか」
「えぇ、そうよ。は、はぁ、全く……ま、まぁでも何というか……名瀬君のおかげで悲しい気分は若干まぎれたわ。だからその……ありがとね」
「そっか。まぁそれなら良かったよ」
早見さんはプイっとそっぽを向きながらも、そう言って俺に感謝の言葉を伝えてきてくれた。
そしてそんな早見さんの表情を見ていくと、先ほどまで流していた涙はもう出ていないし、表情もだいぶ良くなっていた。
(あぁ、良かった。多少はメンタルも回復したようだな)
ヤクザキックが飛んできたり指を折られそうになったりとか怖い場面は多々あったけど、とりあえず早見さんの悲しい気持ちがまぎれてくれたようなら何よりだ。
「あ、そうだ。そういえば結局ご飯を奢る事について何も話せなかったわね? その話もちゃんとしたいからさ、良かったら連絡先交換をしておきましょうよ?」
「あぁ、そうだな。それじゃあ、はいこれ」
早見さんは連絡先を交換しようと提案してきてくれたので、俺はすぐにスマホを取り出してLIMEのフレンド用のQRコードを表示していった。
早見さんもすぐにスマホを取り出していき、俺の表示させたQRコードを読み込んでいってくれた。
「うん、ありがとう。フレンド登録が出来たわよ」
「わかった。それじゃあ改めてよろしく。奢る日についてはまた後日改めて決めような。それとせっかくこうして出来た縁だし、これからも何か愚痴とか溢したくなったらいつでも話を聞くからさ、だから気軽に連絡してくれて良いよ」
「……え? 本当に?」
「あぁ、本当だよ。早見さんには口止め料としてご飯も奢って貰える訳だし、それに早見さんもまだしんどい事だってあるだろ? だから俺で良ければいつでも話くらい聞いてやるよ。口は絶対に固いから安心して愚痴ってくれて良いからな」
「……うん。ありがとう。今日の失恋話は誰にも言えないし……私の話を聞いてくれるって言って貰えるのは助かるわ。それじゃあお言葉に甘えて名瀬君にはこれからもちょくちょく連絡させて貰うわね」
「あぁ、わかった。俺は結構暇な時は多いから早見さんが話したい時はいつでも連絡してくれて良いからな。よし、それじゃあ午後の授業が始まっちゃうだろうし、そろそろ教室に戻ろうぜ?」
「えぇ、そうね。わかったわ」
俺は早見さんにいつでも愚痴とか何でも話を聞いてあげるという約束をしてから、俺達は一緒に屋上を後にした。
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