第18話

 翌朝。

 昨夜のニュースが流れていた。

「東京・中野区の電車内で男が乗客を刺し、オイルを撒いて火をつけた事件で——」

 画面下部にテロップが順々に並ぶ。

 〈誰も死なず、非常に残念な気持ちで落ち込んでいる〉

 〈東京なら人をたくさん殺せると思った〉

 〈死刑になりたかった〉

 創はまるで普段通りのようにその文字を追っていた。

 しばらくして、ニュースに関するSNSのコメントをいくつか開いた。

 「誰も亡くならなくてよかった」

 「加害者の過去も背景も、もう少し丁寧に取り上げるべき」

 「加害者も、社会の犠牲者かもしれない」

 「冷静な対応、称賛すべき」

 創は、その文字の群れを目でなぞっていた。

 確かにその時、自分がなにかを感じるべきだと思った。

 だが、何も浮かばなかった。

 心の中で〈それは違う〉と言いかけた気もしたが、言葉は立ち上がらなかった。

 違うのは、たぶん自分のほうなのだろう。

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