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春原千草

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わたしを刺すためだけに放たれた棘がいまでも抜けないままで


投げられた言葉の破片を拾っては掌の中で血が滲んでいる


教科書に載ってない世界があることを知らない14歳の教室


怒りとは生き延びるための火花であり灰の下ではまだともしびがある


傘立てに放り出されたままの傘 あなたも迎えを待っているのね


凍らせた記憶のかけらを噛み砕く 知覚過敏の奥歯に沁みるわ


痛みごと連れて歩いて来た道に小さな花がこぼれて咲いた


誰よりもさみしさを知っていたきみの声 わたしをつくる やさしい骨格


許せないまま過ごしていた日々だけど いまとなりには犬の寝息がある


しがみついた怒りを手放せた時にようやく両手で花束を抱けた

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fragment 春原千草 @c93___

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