三日月の痕

外山雪

三日月の痕

前髪を切ってあなたの前に立ち今朝の決意は透明になる


会うまでに話せぬことと話すこと選りわけるほど遠くにゆらぐ


体温を感じる距離を知っているさわれぬことの近似値として


帰るまで昼の会話に包まれて身体は淡い羽根のように


信号は必ず赤に火は青くわたしを均すひとの過不足


あのひとはあのひとが作る食事からできててそれを幸福と呼ぶ


誰にでもやましさのない暴力で星の間に直線を引く


ひとりしか座れぬ椅子をそこに置きの夜空の中に居場所を探す


暗闇の幕に爪かけ引き裂いてひかりこぼれる三日月の痕


おぎなえる水の量だけ泣きに来て秋になったらまた会いましょう



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三日月の痕 外山雪 @sotoyama_yuki

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