閉じた本を開くとき
逢坂美穂
はじまり
あまりのことに声も出ない、なんて言葉があるじゃない?
学校に
ああいうの、
でもね、わたしとしてはね、きゃー!って叫んだつもりだったんだよ。
だけど、まったく出来てなかった。実際は池のコイみたいに口をパクパクさせてただけで、
場所は、古い
時間は──屋根裏には時計がないから正しくはわかんないけど、とりあえず夕方のはず。小さい三角の窓からさしこんできてるオレンジ色でわかる。夕日ってきれいだよね。朝日も好きだけど、どっちかっていうとわたしは夕日の方が好き。
さっきも言ったけど、そういう、雰囲気たっぷりな場所でそれは起こった。
目の前にいきなりぼんやりと、湯気とも違う白っぽいナニカが浮かび上がったと思ったら、それがボヤ〜ってまとまって……
さっき説明した
そして
(……つむぎちゃんか?)
えっ。オバケが話した?
……や、耳から聞くのとはちょっと違うかも。「頭の中に直接」ってやつかもしれない。不思議な感じはしたけど、確かにおじいさんの声が聞こえた。
ガン見して動かないわたしとは反対に、両手をバンザイして一気に嬉しそうになったおじいさんは、
(おお!やっぱりそうだ!つむぎちゃんか!!)
そう言って、わたしにガバッと抱き着いてきた。
ううん、抱き着いてこようとした。
透明なおじいさんはアッサリわたしをすりぬけて、音もなく床に倒れてしまった。え、痛くない?と思ったけど、むっくり起き上がったおじいさんは平気そうだ。
おまけに、わたしを見てニッコリ笑う。
(驚かんでいいよ。こわくないから。じいちゃんだから)
そんなこと言われてもさ、と思いながら心臓が飛び出しそうになってる胸を手でおさえて、おじいさんを見た。灰色に近い髪と、目のはしっこにあるやさしそうなシワ。笑ってるからすごく深いシワだけど、それがすごく安心する感じ。
………あれ?わたし、この顔知ってる気がするんだけど。
目をつむって、必死に思い出そうとする。
たしか、お母さんが飾ってねって言ってた写真の中にひとつあったはず。リビングに置いてある、たくさんの写真立ての中の1枚。
そうだ、あの中に1枚だけあった。
ちょうど写真の真ん中に立ってる人がいて、その両側にお母さんとお父さんがいて。お母さんはちょっとだけ心配そうな顔をしながら、真ん中の人に抱っこされてる赤ちゃん──わたしをみている。で、他でもないわたしを抱っこしてる真ん中の人は、灰色に近い髪をしていて──……あ。
写真でみたおじいさんと、目の前に立ってる(?)おじいさん。
おんなじ顔してる!?
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