10章『記憶処理を生業としています』

1話「知恵の樹、もしくは黒い枝」

特にはなんでもない、いつも通りの日。つまりはただの日常。

なんらかのものを作っていたり、汽車を走らせていたり、砂漠を裸足で歩いていたり、ふわふわとした雰囲気で温かい部屋の中で同じ毛布に包まっていたり。そんな日常生活を迎えていた。



それだけだったのに。それだけでよかったのに。







ある日。世界が灰色に染まり、いつも空だと認識しているところから逆さの樹が降りてきた。

それを、汽車の上から眺めている。

「うわ。」

「あ〜あ〜……。」

「(人魚語)」

「(人魚語)」

「えっ?行くの?……………………行くの!?!?!?」

「ま、まぁ…………あの人のせいだろうし。行っても行かなくても似たようなものだろう。」

「それも……そうかも。」

「(人魚語)」

「(人魚語)」

「(人魚語)」

「………………(人魚語)」

「そ、そんなねっちょりと言う事あるんだそれ。」





とある地のコンクリートの上にて。

「目標確認。」

『了解。』

『射撃開始。』

「了解した。」

1つの部隊の射撃による鎮圧が始まる____________________というところで、とある人物がその目標がいる方向に立ったせいで引き金を引こうとした指が止まった。




「STOP.」

目の前の人物がそう言った瞬間、パ、と音を立てて周囲が赤くなる。

そうする意味は無い、と思った1人がその人物に向かって撃った。

しかし、弾が当たったようには見えなかった。が、それだけでは無い。その1人は首を捻られて死んでいた。…………し、それを確認した1人も同じ方法で死んでいる。

「…………OK.」

目の前の人物がそう言った瞬間、パ、と音を立てて周囲が緑になった。

その瞬間、皆が指を動かし引き金を引いた。が、その中に隣が気になって手が止まってしまった者がいた。

そんな者を見逃さず、目の前の人物は近付いた。

「………………Noob?」

その者は首を捻られて死んだ。どうやら、外れた行動はしてはならないらしい。それが判った瞬間、内心冷や汗をかきながらも銃を撃ち続ける事に集中した。

「……KEEP……KEEP……」

パ…………パ…………と音を立てて、周囲の黄色が点いては消えてを繰り返す。

このまま撃ち続ける事にした。

…………。

……………………。

「STOP.」

指を止めた。が、銃弾は止まらなかった。

…………………………3人が首を捻られて死んだ。







……少数部隊だったせいで、残りは私1人となっていた。

「…………Hello?」

「…………お前は、何者だ。」

「……Hmm…………」

「すまない、私にその言語は分からない。」

「…………あぁ、そう。」

「…………ちゃんと話せるじゃないか。で、お前は何者だ。」

「何者でもない、ただの放浪者だよ。」

「ふ〜ん?そんな放浪者が私の邪魔を?」

「まぁね〜。」

「…………で、そんな事を聞いてきたキミは?」

「…………悪いな、機密情報だから教えられない。」

「ふぅん……政府ね〜。」

「はは、バレたか。」

「機密、なんて言葉は政府の間でしか使われない。……スパイも使うけどね〜。」

「で……その部隊はお姉さんの能力だね?」

「…………分かるのか。」

「能力かどうかまで分かっちゃうからね。」

「面倒だな。」

「そう?僕はそれなりに愉しいけど。」

「お前の所属は?」

「さ、どこだろう!放浪しちゃったからわっかんないや!」

「…………はぁ。」

「まぁいい。」

「まぁいい?何が?」

気付けば、少しずつ首が捻れようとしていた。













「邪神の使い共が消えたら、焦土の地にてワタシに遭おう。」

「………………………………Hello?」

不思議な人物はゆっくりと地を歩いて何処かへと向かって行く。

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