6話「超範囲にまで及ぶ■殺ミーム」
あれから数両。ドアを開けて次の車両に入った瞬間、頭が拘束具で締め付けられているかのように痛み始めた。どうやら、正面に【菩薩】がいるらしい。
耳鳴りがとても喧しい。
(どう切り抜けるかな……。)
これからの動きを考えようと思ったが、それをすればこの能力の影響を受けて首を吊ってしまうだろう。だから考えきる前に駆け抜けて次の車両に行く事にした。
_______ドアに手を駆けたところで、後ろからドアに身体が押し付けられた。
「…………ぃ゙った……。」
「……おい……【菩薩】。」
「お前がそうしてくれるなら……こっちにも考えがあるんだ…………。」
「…………。」
「俺はこのまま【生命】を捜す。だからここで待っていろ。」
「文句は言うなよ……。こうでもしないとお前は止まらないんだからな……。」
嫌だと言いたげに、ドアに押し付けられる力が増す。
(……燃やされるのは流石に嫌か。でも、そうでもしないと本当に止まらないんだよな。)
ドアに手をかけ、そのままゆっくりとスライドさせる。その間もドアへと潰さんとして背後からの力は増していくが、まぁ気にしない。
(……もう、少し………………。)
ドアが全開になり、勢いよく次の車両のドアにぶつかった。
「あ゙ッ…………だぁ……っ!!」
窓の部分に思いっきり頭が当たってしまった。痛い。とても痛い。
頭の中の骨ががんがんと打ち付けられて痛い。
それでも止まれない。それに、どうせ自分ごと燃やすから関係ない。
だから次の車両へのドアを開けて中に入った。
(ここにも……いないか。)
がんがんと痛む頭を押えてその場にしゃがみ込み、少し休む。
(くそ……痛い…………。)
(…………こうなったなら……今、燃やしてしまうか……?)
(…………はぁ……もういいや。やるか。)
制服のボタンを全て外して脱ぎ、その場に倒れる。
「はぁ……はぁ……。」
胸元に手を当てる。
「…………ぅ……いたっ……。」
そのまま心臓へと向けて手を入れる。
「…………く……うぅ……。」
頭の痛みと心臓を外界へと引き摺り出す痛みがこの肉体を支配する。
「ぅ……」
「ぅああああぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
「っ…………この、汽車の……」
「【炉を焚べよ】……!!!」
引き摺り出した心臓をその場に掲げる。
その心臓はじっくりゆっくりと下側から燃え始めた。
それからすぐに、車掌室から炎は燃え広がった。
全ての車両を炎が包み込み、汽車の車輪は更に炎を増して燃え盛り線路を走る。
この車両のドアが開くのが見えた。
………………【菩薩】の姿が見えた。
「…………。」
【菩薩】はこの身体に馬乗りになり、瞼を下ろした頭部をこちらに見せつけた。
「な、なに……。」
そのまま頭部が近付いて………………自分の唇に柔らかいものが当たった。
その余韻を感じていると、その頭部は転がって座席の下へと行ってしまった。
【菩薩】の肉体が上に倒れた。その重みを感じながら意識は遠のいた。
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